ともすれば、盆栽が「生きている」ことを軽く考え、唯外見上からの色や形ばかり捉われて鉢を選びがちである。
 特に小品盆栽に於て、この傾向は強いが小鉢になるほど、樹種に適した質や形の鉢を使わなければ、ただ小さいだけ、にとどまり、到底、一品一樹で鑑賞に耐え得る、美しい盆栽はできない。
 盆栽に適した鉢は、陶器である。
 磁器は、前述の六条件に、全部適合しないので、短期観賞用か、強い樹種で、しかもよく樹を馴らし、あるいは日常管理が良くなければならないが、培養経験の浅い人には不向きであり、樹格を上げようとする樹には不適である。
 陶器が良い、とは言え、最近作られる陶器鉢は、胎土が機械で作られ、土粒が細かく砕かれ過ぎて、しかも高温で焼くために、胎土が溶けて、磁器状になり、たたくと、ピンピンと高音に響き、手の平を当てると、骨まで冷たさが沁みて来る様な、粗悪な陶器鉢がほとんどである。
 掌を当てて、体温が静かに鉢に伝わり、そのぬくもりが直ぐには醒めぬ様な「あたたかい鉢」が最上の鉢である。
 弱ったもの、樹格を上げたいもの、老木で若返らせたいもの、を植えるのは泥物が良い。戦前の中国鉢や和鉢の中から、胎土に通気性が多く、しかも低温で焼き上げた、いわゆる「暖かい鉢」が良い。
 盆栽に灌水したあと、しばらくたっても、鉢の胎土が水を含んで、しっとりしている様な鉢が、培養上最良の鉢で、鉢の表に釉薬がかかっている陶器鉢でも、鉢底の胎土を調べれば、誰にでも明確にわかるものである。
工事中
「盆栽と鉢と置き場」と言えば、三位一体のものである。それは、人間生活に置き換えて言わしてもらえば、「人生と住まいと風土」ということになる。
「盆栽の鉢」はイコール「人生の住まい」である。
 鉢抜きで置く盆栽は、そして庭木や自然樹は、「人生と風土」で穴居生活か青空住まいか樹上樹下生活の原始生活の図である。
「鉢は盆栽の住まいである」
 この大原則にもとづいて、この稿を進める。
 盆栽の鉢とは何か?大別すれば、盆栽培養的鉢と、盆栽観賞的鉢となる。
 このコーナーの主旨は、一人でも多くの人々に、盆栽という小自然を理解して戴き、好きになってもらい、そして、正しく早く、盆栽を作れる様になり、後世に残るような、価値ある、芸術盆栽や、庭や自然を手がけてもらいたいし、そしてまた、心ある人は、それらの名手(専門家)になり、あるいはファン(理解者)
になり、芸術盆栽の所有者、支持者(援護者保護者)になってもらいたい、ということである。

 盆栽の根が、鉢土の中で、理想的な生育をするのに、大切なことは
1.空気が粒土の間を適当に流通する。(通気)
2.水分が平均して鉢の中に保たれる。(保水)
3.余分な水が鉢の外に排出される。(排水)
4.鉢土の温度が急激に変化しない。(保温)
5.太陽熱が吸収されて鉢土が温まる。(吸温)
6.根が動かぬように保持される。(安定)

 などである。
したがって、盆栽培養に重点を置き、盆栽を健康に保持しながら、早く一人前に完熟させ、花を咲かせ実を成らせ、葉を小さく節間を短く、小枝を多く、枝幹に古色を現わし、立ち上がりも上根の張りも良くし、細根を十分に鉢中に張らせて、しかも自然樹より以上に長寿を保たせて、美しく観賞しようと思うならば、「盆栽の住居」である鉢の、胎土や釉や、足や鉢底にも、形にも、大いに関心を持たなければならないと思う。
 

この鉢は
故北村卓三先生から小品盆栽の大家、立花敬造様に贈られた物。

「私の所では盆栽が少なくなったので、この鉢は中村さんが持っているのが一番似合うよ!」といって
立花様が私にくださった鉢。
大切にしています。
盆栽鉢作家 祐峰 福峰 富舟 三宝寺 その他
この鉢は府中市の和田さんのところに行きました。