自民党の憲法改「正」案の行方

(1) 2004/11/17  自民党憲法改正草案(たたき台)  〜「己も他もしあわせ」になるための「共生憲法」を目指して〜
(2) 2005/4/4  自民党新憲法起草委員会各小委員会要綱  自民党新憲法起草委員会
(3) 2005/8/1  自民党新憲法第1次案
(4) 2005/10/28  自民党新憲法草案


「自民党新憲法草案」のネライって?
2005/11/3

自民党の「新憲法草案」、要するに、自民党の人たちが、考えているホンネっていうのは、……
基本的人権の本格的な制限とか、
愛国心や国を守ることを国民の義務にするとか、
政府批判のマスコミや市民運動に対する規制強化とか、
本当にやりたいことは、ひとまず先に置いといて、

とりあえず今回の「改正」では、次の2つだけはどうしても変えたい。
1.「不戦・非武装の「9条」を変えて、
9条の2で、「自衛軍」を明記する、
2.96条の「憲法改正手続き」を簡単にしておく。

 改正手続きさえ緩和しておけば、あとはいつでも変えられるわけで、後は小出しにして、だんだんと「改正」していこうってことなんだ。
 ただ、それらの中で、以下の4点だけは、今回やっておきたいらしい。
3.日本国憲法の基本理念を述べている今の前文は、9条改正と矛盾するから、天皇制の尊重と、愛国心、国防を強調し、自衛隊が海外で活動すること(きれいな言葉で言えば「国際貢献」)を、前文に書き込む、
4.12条で、「国民の責務および義務」っていう文章で、国家優先、国益優先、「そのためには基本的人権も制限するぞ」って、国民に認めさせること、
  ……たとえば、「沖縄の米軍基地の移設反対運動などは認めないぞ」っていうことだね。
  それと、戦争・戦闘行為の中で、ジャーナリズムや「反戦運動」なども規制されることになる。
5.20条で、政教分離を緩和して、「社会的儀礼や習俗的行為に参加することは認める」とする、
  ……要するに、靖国神社に総理大臣が公的参拝するのを「合憲」にしておこうということ、
6.76条で、「軍事裁判所」を設置する、
  ……軍隊を持ったら、いわば当然のことなんだろうけど、軍隊内部の裁判は一般の裁判所にはまかせられない、治外法権にしておきたい。
 「軍事裁判所」っていうのは、別名、「軍法会議」なんだ。


自民党新憲法草案全文
2005年10月28日


 目次
 前文
第1章 天皇(第1条〜第8条)
第2章 安全保障(第9条・第9条の2)
第3章 国民の権利及び義務(第10条〜第40条)
第4章 国会(第41条〜64条の2)
第5章 内閣(第65条〜75条)
第6章 司法(第76条〜82条)
第7章 財政(第83条〜91条)
第8章 地方自治(第91条の2〜95条)
第9章 改正(第96条)
第10章 最高法規(第97条〜99条)

・自民党案で、現行憲法と、内容において異なっている条文のみ、現憲法の条文を赤字で記しました。
・文章や項の順序が変わっている場合でも、内容において差がないと認められる条文は、あえて指摘してありません。


前文

 日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する。
 象徴天皇制は、これを維持する。また、国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義の基本原則は、不変の価値として継承する。
 日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、自由かつ公正で活力ある社会の発展と国民福祉の充実を図り、教育の振興と文化の創造及び地方自治の発展を重視する。
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。
 日本国民は、自然との共生を信条に、自国のみならずかけがえのない地球の環境を守るため、力を尽くす。

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 第一章 天皇

 (天皇)
 第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

 (皇位の継承)
 第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

 第三条 (第六条第四項参照)

 (天皇の権能)
 第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。

 第五条 (第七条参照)

 (天皇の国事行為)
 第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 第五十四条第一項の規定による決定に基づいて衆議院を解散すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。

三 衆議院を解散すること。

 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免並びに全権委任状並びに大使及び公使の信任状を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。

 3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。

 4 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う。

 (摂政)
 第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。

 2 第四条及び前条第四項の規定は、摂政について準用する。

 (皇室への財産の譲渡等の制限)
 第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の議決を経なければならない。

 第二章 安全保障

 (平和主義)
 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 (自衛軍)
 第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。

 2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

 3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

 4 前二項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

第二章 戦争の放棄

(戦争放棄、軍備及び交戦権否認)
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 第三章 国民の権利及び義務

 (日本国民)
 第十条 日本国民の要件は、法律で定める。

 (基本的人権の享有)
 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

 (国民の責務)
 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。

(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止)
第12条
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 (個人の尊重等)
 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(個人の尊重)
第13条 
 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 (法の下の平等)
 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

(法の下の平等)
第14条 
 すべて国民は、すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 2 華族その他の貴族の制度は、認めない。

 3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 (公務員の選定及び罷免に関する権利等)
 第十五条 公務員を選定し、及び罷免することは、国民固有の権利である。

 2 すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。

 3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

 4 選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

 (請願をする権利)
 第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。

 2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。

 (国等に対する賠償請求権)
 第十七条 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 (奴隷的拘束及び苦役からの自由)
 第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。

 2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

 (思想及び良心の自由)
 第十九条 思想及び良心の自由は、侵してはならない。

 3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

 (信教の自由)
 第二十条 信教の自由は、何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

 3 国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 (表現の自由)
 第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の 自由は、何人に対しても保障する。

 2 検閲は、してはならない。

 (国政上の行為に関する説明の責務)  【新設】
 第二十一条の二 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。

 (居住、移転及び職業選択等の自由等)
 第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 2 すべて国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 (学問の自由)
 第二十三条 学問の自由は、何人に対しても保障する。

 (婚姻及び家族に関する基本原則)
 第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 (生存権等)
 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 2 国は、国民生活のあらゆる側面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 (国の環境保全の責務) 【新設】
 第二十五条の二 国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

 (犯罪被害者の権利) 【新設】
 第二十五条の三 犯罪被害者は、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有する。
 
(教育に関する権利及び義務)
 第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。

 (勤労の権利及び義務等)
 第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。

 3 児童は、酷使してはならない。

 (勤労者の団結権等)
 第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

 (財産権)
 第二十九条 財産権は、侵してはならない。

 2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上及び活力ある社会の実現に留意しなければならない。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

 3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

 (納税の義務)
 第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 (適正手続の保障)
 第三十一条 何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

 (裁判を受ける権利)
 第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

 (逮捕に関する手続の保障)
 第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 (抑留及び拘禁に関する手続の保障)
 第三十四条 何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げられることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。

 2 拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。

 (住居等の不可侵)
 第三十五条 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。ただし、第三十三条の規定により逮捕される場合は、この限りでない。

 2 前項本文の規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。

 (拷問等の禁止)
 第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対に禁止する。

 (刑事被告人の権利)
 第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

 2 被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる権利及び公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

 3 被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。

 (刑事事件における自白等)
 第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

 2 拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。

 3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。

 (遡及処罰等の禁止)
 第三十九条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

 (刑事補償を求める権利)
 第四十条 何人も、抑留され、又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 第四章 国会

 (国会と立法権)
 第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

 (両議院)
 第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

 (両議院の組織)
 第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。

 2 両議院の議員の定数は、法律で定める。

 (議員及び選挙人の資格)
 第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

 (衆議院議員の任期)
 第四十五条 衆議院議員の任期は、4年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。

 (参議院議員の任期)
 第四十六条 参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。

 (選挙に関する事項)
 第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。

 (両議院議員兼職の禁止)
 第四十八条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

 (議員の歳費)
 第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 (議員の不逮捕特権)
 第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。

 (議員の免責特権)
 第五十一条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

 (常会)
 第五十二条 国会の常会は、毎年1回召集する。

 2 常会の会期は、法律で定める。  【新設】

 (臨時会)
 第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

 (衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別会及び参議院の緊急集会)
 第五十四条 第六十九条の場合その他の場合の衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。  【新設】

 2 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会の特別会を召集しなければならない。

 3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

 4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

 (資格争訟の裁判)
 第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。

 (表決及び定足数)
 第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 2 両議院の議決は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければすることができない。

 第56条 定足数・表決 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
 2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数ときは、議長の決するところによる。

 (会議及び会議録の公開等)
 第五十七条 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

 2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。

 3 出席議員の5分の1以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。

 (役員の選任並びに議院規則及び懲罰)
 第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

 2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。

 (法律案の議決及び衆議院の優越)
 第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

 2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

 3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

 4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 (予算案の議決等に関する衆議院の優越)
 第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。

 2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 (条約の承認に関する衆議院の優越)
 第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

 (議院の国政調査権)
 第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

 (国務大臣の議院出席の権利及び義務)
 第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院のいずれかに議席を有すると有しないとにかかわらず、いつでも議案について発言するため議院に出席することができる。

 2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、職務の遂行上やむを得ない事情がある場合を除き、出席しなければならない。

(閣僚の議院出席)
第63条   内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のために出席を求められたときは、出席しなければならない。

 (弾劾裁判所)
 第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

 2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

 (政党)   【新設】
 第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることにかんがみ、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。

 2 政党の政治活動の自由は、制限してはならない。

 3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

 第五章 内閣

 (内閣と行政権)
 第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

第65条 行政権は、内閣に属する。

 (内閣の組織及び国会に対する責任)
 第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織する。

 2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

 3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

 (内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)
 第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。

 2 国会は、他のすべての案件に先立って、前項の指名を行わなければならない。

 3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。

 (国務大臣の任免)
 第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

 2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

 (内閣の不信任と総辞職)
 第六十九条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 (内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職)
 第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 (総辞職後の内閣)
 第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

 (内閣総理大臣の職務)
 第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。

 2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

 (内閣の職務)
 第七十三条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 外交関係を処理すること。
 三 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
 四 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務を掌理すること。
 五 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
 六 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
 
五 予算を作成して国会に提出すること。

六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

 (法律及び政令への署名)
 第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

 (国務大臣の特権)
 第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、訴追の権利は、これにより害されない。

 第六章 司法

 (裁判所と司法権)
 第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

 2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。

 3 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。 【新設】

 4 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 (最高裁判所の規則制定権)
 第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

 2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。

 3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 (裁判官の身分保障)
 第七十八条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。

 (最高裁判所の裁判官)
 第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。

 2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。

 3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

 4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

 5 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、やむを得ない事由により法律をもって行う場合であって、裁判官の職権行使の独立を害するおそれがないときを除き、減額することができない。

6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 (下級裁判所の裁判官)
 第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。

 2 前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。

2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 (法令審査権と最高裁判所)
 第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

 (裁判の公開)
 第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。

 2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない。

 第七章 財政

 (財政の基本原則)
 第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

 2 財政の健全性の確保は、常に配慮されなければならない。 【新設】

 (租税法律主義)
 第八十四条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。

 (国費の支出及び国の債務負担)
 第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

 (予算)
 第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。

 2 当該会計年度開始前に前項の議決がなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を経るまでの間、必要な支出をすることができる。 【新設】

 3 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 【新設】

 (予備費)
 第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

 2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 (皇室財産及び皇室の費用)
 第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

 (公の財産の支出及び利用の制限)
 第八十九条 公金その他の公の財産は、第二十条第三項の規定による制限を超えて、宗教的活動を行う組織又は団体の使用、便益若しくは維持のため、支出し、又はその利用に供してはならない。

 2 公金その他の公の財産は、国若しくは公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 (決算の承認)
 第九十条 内閣は、国の収入支出の決算について、すべて毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに国会に提出し、その承認を受けなければならない。

第90条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

 2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

 (財政状況の報告)
 第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

 第八章 地方自治

 (地方自治の本旨) 【新設】
 第九十一条の二 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。

 2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負う。


 (地方自治体の種類等) 【新設】
 第九十一条の三 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括し、補完する広域地方自治体とする。

 2 地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。

 (国及び地方自治体の相互の協力) 【新設】
 第九十二条 国及び地方自治体は、地方自治の本旨に基づき、適切な役割分担を踏まえて、相互に協力しなければならない。

 (地方自治体の機関及び直接選挙)
 第九十三条 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。

2 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民が、直接選挙する。

 (地方自治体の権能)
 第九十四条 地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 (地方自治体の財務及び国の財政措置) 【新設】
 第九十四条の二 地方自治体の経費は、その分担する役割及び責任に応じ、条例の定めるところにより課する地方税のほか、当該地方自治体が自主的に使途を定めることができる財産をもってその財源に充てることを基本とする。

 2 国は、地方自治の本旨及び前項の趣旨に基づき、地方自治体の行うべき役務の提供が確保されるよう、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講ずる。

 3 第八十三条第二項の規定は、地方自治について準用する。


 第九十五条 【削除】
第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 第九章 改正

 第九十六条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議に基づき、各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体であるものとして、直ちに憲法改正を公布する。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 第十章 最高法規

 (基本的人権の意義)
 第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 (憲法の最高法規性等)
 第九十八条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 (憲法尊重擁護義務)
 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。

 (注)新憲法草案の条文番号は、現段階では、参照の便宜のため現行憲法とそろえた。






新憲法第一次案 自由民主党
2005年8月1日発表


【赤字は現憲法の見出し・項目】

第一章 天皇
第1条 天皇 【天皇の地位】
第2条 皇位の継承
第3条  【天皇の国事行為に対する責任】
第4条 天皇の権能
第5条  【摂政】
第6条 天皇の国事行為 【天皇の任命権】
第7条 摂政  【国事行為】
第8条 皇室への財産の譲渡等の制限 【皇室の財産授受】
第二章 安全保障 【戦争放棄】
第9条 安全保障と平和主義 【戦争放棄、軍備及び交戦権否認 】
第9条の二 自衛軍 【新設】
第9条の三 自衛軍の統制 【新設】
第三章 国民の権利及び義務
第10条 日本国民  【国民の要件】
第11条 基本的人権の享有  【基本的人権の不可侵】
第12条 国民の責務 【自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止】
第13条 個人の尊重等 【個人の尊重】
第14条 法の下の平等
第15条 公務員の選定等に関する権利 【公務員の選定及び罷免の権利、普通選挙と秘密選挙の保障】
第16条 請願をする権利  【請願権】
第17条 公務員の不法行為による損害の賠償を求める権利 【国及び公共団体の賠償責任】
第18条 奴隷的拘束及び苦役からの自由
第19条 思想及び良心の自由
第20条 信教の自由
第21条 表現の自由  【集会・結社・表現の自由と通信の秘密】
第22条 職業選択等の自由 【居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由】
第23条 学問の自由
第24条 婚姻及び家族に関する基本原則 【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】
第25条 生存権等 【生存権、国の社会的使命】
第26条 教育に関する権利及び義務  【教育に関する権利と義務】
第27条 勤労に関する権利等 【勤労の権利・義務、労働条件、児童酷使の禁止】
第28条 勤労者の権利 【勤労者の団結権 】
第29条 財産権
第30条 納税の義務
第31条 適正手続の保障 【法定の手続の保障 】
第32条 裁判を受ける権利
第33条 人身の自由  【不当な逮捕をされない権利】
第34条   【抑留・拘束の禁止】
第35条 住居等の不可侵  【住居の不可侵】
第36条 拷問等の禁止 【拷問と残虐刑の禁止】
第37条 刑事被告人の権利
第38条 刑事事件における自白等 【自白の証拠能力】
第39条 遡及処罰等の禁止 【遡及処罰・二重処罰の禁止】
第40条 刑事補償を求める権利 【刑事補償】
第四章 国会
第41条 国会と立法権 【国会の地位】
第42条 両議院 【両院制】
第43条 両議院の組織
第44条 議員及び選挙人の資格 【平等選挙】
第45条 衆議院議員の任期
第46条 参議院議員の任期
第47条 選挙に関する事項
第48条 両院議員兼職の禁止
第49条 議員の歳費 【歳費】
第50条 議員の不逮捕特権
第51条 議員の発言及び表決の無答責 【議員の発言・表決の無責任】
第52条 常会
第53条 臨時会
第54条 衆議院の解散、特別会及び参議院の緊急集会 【衆議院の解散と総選挙・参議院の緊急集会】
第55条 資格争訟の裁判
第56条 表決及び定足数 【定足数・表決】
第57条 会議及び会議録の公開等 【会議の公開と会議録】
第58条 役員の選任並びに議院規則及び懲罰 【役員選任・議員規則・懲罰 】
第59条 法律案の議決及び衆議院の優越 【法律の成立と衆議院の優越】
第60条 予算案の議決等に関する衆議院の優越 【予算議決と衆議院の優越 】
第61条 条約の承認に関する衆議院の優越 【条約の承認と衆議院の優越 】
第62条 議院の国政調査権 【国政調査権】
第63条 閣僚の議院出席の権利と義務 【閣僚の議院出席 】
第64条 弾劾裁判所
第64条の2 政党 【新設】
第五章 内閣
第65条 内閣と行政権 【行政権】
第66条 内閣の組織及び国会に対する責任 【内閣の組織と責任 】
第67条 内閣総理大臣の指名 【内閣総理大臣の指名と衆議院の優越】
第68条 国務大臣の任免等 【国務大臣の任免・罷免】
第69条 内閣の不信任と総辞職 【衆議院の内閣不信任】
第70条 内閣総理大臣の欠缺等と総辞職 【内閣総理大臣の欠缺(けんけつ)又は総選挙後の総辞職】
第71条 総辞職後の内閣
第72条 内閣総理大臣の職務
第73条 内閣の職務
第74条 法律及び政令への署名 【法律・政令の署名】
第75条 国務大臣の特権
第六章 司法
第76条 裁判所と司法権 【司法権及びその行使】
第77条 最高裁判所の規則制定権
第78条 裁判官の身分保障
第79条 最高裁判所の裁判官
第80条 下級裁判所の裁判官
第81条 法令審査権と最高裁判所 【法令審査権】
第82条 裁判の公開
第七章 財政
第83条 財政の基本原則 【財政処理の基本原則】
第84条 租税法律主義 【課税】
第85条 国費の支出と債務負担
第86条 予算
第86条の二 継続費 【新設】
第87条 予備費
第88条 皇室財産 【皇室の財産と費用 】
第89条 公の財産の用途制限 【公の財産の利用の制限】
第90条 決算の検査及び国会の承認 【会計検査院】
第91条 財政状況の報告
第八章 地方自治
第91条の二 地方自治の本旨 【新設】
第91条の三 地方自治体の役割等 【新設】
第91条の四 国及び地方自治体の相互の協力 【新設】
第91条の五 地方自治体の種類 【新設】
第92条 地方自治体の組織等 【地方自治の基本原則】
第93条 地方自治体の機関及び直接選挙 【議会の設置及び長・議員の選挙】
第94条 地方自治体の権能 【地方公共団体の機能】
第94条の二 地方自治体の財務及び財政措置 【新設】
第95条  【削除・特別法の住民投票 】
第九章 改正
第96条 改正の手続
第十章 最高法規
第97条 基本的人権の意義 【基本的人権の本質】
第98条 憲法の最高法規性等 【最高法規性、条約及び国際法規の遵守】
第99条 憲法尊重擁護義務 【憲法尊重擁護の義務】

・自民党案で、現行憲法と、内容において異なっている条文のみ、現憲法の条文を赤字で記しました。
・文章や項の順序が変わっている場合でも、内容において差がないと認められる条文は、あえて指摘してありません。

第一章 天皇

(天皇)
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

 (皇位の継承)
第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

第三条 (第六条第四項・第五項参照)

(天皇の権能)
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。

第五条 (第七条参照)

(天皇の国事行為)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 第五十四条第一項の決定に基づいて衆議院を解散すること。

三 衆議院を解散すること。

四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免並びに全権委任状並びに大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。

3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。

4 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とする。

5 前項の行為の責任は、内閣が負う。

(摂政)
第七条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。

2 第四条並びに前条第四項及び第五項の規定は、摂政について準用する。

(皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。


第二章 安全保障

 (安全保障と平和主義)
第九条 日本国民は、諸国民の公正と信義に対する信頼に基づき恒久の国際平和を実現するという平和主義の理念を崇高なものと認め、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する平和国家としての実績に係る国際的な信頼にこたえるため、この理念を将来にわたり堅持する。

2 前項の理念を踏まえ、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使又は武力による威嚇を永久に行わないこととする。

3 日本国民は、第一項の理念に基づき、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする。

 (自衛軍)
第九条の二 侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する。

2 自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びに我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。

3 自衛軍による活動は、我が国の法令並びに国際法規及び国際慣例を遵守して行わなければならない。

4 自衛軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

 (自衛軍の統制)
第九条の三 自衛軍は、内閣総理大臣の指揮監督に服する。

2 前条第二項に定める自衛軍の活動については、事前に、時宜によっては事後に、法律の定めるところにより、国会の承認を受けなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、自衛軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。

第二章 戦争の放棄

(戦争放棄、軍備及び交戦権否認)
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。



第三章 国民の権利及び義務

 (日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。

 (基本的人権の享有)
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。

(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止)
第12条
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

(個人の尊重等)
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(個人の尊重)
第13条 
 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 (法の下の平等)
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 (公務員の選定等に関する権利)
第十五条 公務員を選定し、及び罷免することは、国民固有の権利である。

2 すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

 (請願をする権利)
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。

2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。

 (公務員の不法行為による損害の賠償を求める権利)
第十七条 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 (奴隷的拘束及び苦役からの自由)
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。

2 何人も、犯罪による処罰の場合を除き、その意に反する苦役に服させられない。

 (思想及び良心の自由)
第十九条 思想及び良心の自由は、侵してはならない。

 (信教の自由)
第二十条 信教の自由は、何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及び公共団体は、社会的儀礼の範囲内にある場合を除き、宗教教育その他の宗教的活動をしてはならない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 (表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、何人に対しても保障する。

2 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

 (職業選択等の自由)
第二十二条 何人も、公益及び公の秩序に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

 (学問の自由)
第二十三条 学問の自由は、何人に対しても保障する。

 (婚姻及び家族に関する基本原則)
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 (生存権等)
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2 国は、国民生活のあらゆる側面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 (教育に関する権利及び義務)
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。

 (勤労に関する権利等)
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。

3 児童は、酷使してはならない。

 (勤労者の権利)
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

 (財産権)
第二十九条 財産権は、侵してはならない。

2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

 (納税の義務)
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 (適正手続の保障)
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

 (裁判を受ける権利)
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

 (人身の自由)
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

2 何人も、正当な理由なく、かつ、その理由を直ちに告げられることなく、抑留され、又は拘禁されない。

3 抑留され、又は拘禁された者は、直ちに弁護人に依頼する権利並びに拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。

第三十四条 (第三十三条第二項・第三項参照)

 (住居等の不可侵)
第三十五条 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。ただし、前条第一項の規定により逮捕される場合は、この限りでない。

2 前項本文の規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。

 (拷問等の禁止)
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対に禁止する。

 (刑事被告人の権利)
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2 被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる権利及び公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3 被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。

 (刑事事件における自白等)
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2 拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。

3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。

 (遡及処罰等の禁止)
第三十九条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

 (刑事補償を求める権利)
第四十条 何人も、抑留され、又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。


第四章 国会

(国会と立法権)
第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

(両議院)
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

(両議院の組織)
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。

2 両議院の議員の定数は、法律で定める。

(議員及び選挙人の資格)
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

(衆議院議員の任期)
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

(参議院議員の任期)
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

(選挙に関する事項)
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。

(両議院議員兼職の禁止)
第四十八条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

(議員の歳費)
第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

(議員の不逮捕特権)
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない。

(議員の発言及び表決の無答責)
第五十一条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

(常会)
第五十二条 国会の常会は、毎年一回召集する。

2 常会の会期は、法律で定める。

(臨時会)
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

(衆議院の解散、特別会及び参議院の緊急集会)
第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。【新設】

2 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会の特別会を召集しなければならない。

3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

(資格争訟の裁判)
第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

(表決及び定足数)
第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。

(会議及び会議録の公開等)
第五十七条 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除いては、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。

3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。

(役員の選任並びに議院規則及び懲罰)
第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、及び院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

(法律案の議決及び衆議院の優越)
第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

(予算案の議決等に関する衆議院の優越)
第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。

2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

(条約の承認に関する衆議院の優越)
第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

(議院の国政調査権)
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

(閣僚の議院出席の権利と義務)
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院のいずれかに議席を有すると有しないとにかかわらず、いつでも議案について発言するため議院に出席することができる。

(閣僚の議院出席)
第63条 
 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のために出席を求められたときは、出席しなければならない。

2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、職務の遂行上やむをえない事情がある場合を除き、出席しなければならない。

(弾劾裁判所)
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

(政党) 【新設】
第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることにかんがみ、その活動の公明及び公正の確保並びにその健全な発展に努めなければならない。

2 政党の政治活動の自由は、制限してはならない。



   第五章 内閣

(内閣と行政権)
第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

第65条 行政権は、内閣に属する。

(内閣の組織及び国会に対する責任)
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織する。

2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

(内閣総理大臣の指名)
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。

2 国会は、他のすべての案件に先立って、前項の指名を行わなければならない。

3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。

(国務大臣の任免等)
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

(内閣の不信任と総辞職)
第六十九条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

(内閣総理大臣の欠缺等と総辞職)
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

(総辞職後の内閣)
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

(内閣総理大臣の職務)
第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。

2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

(内閣の職務)
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
五 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。

五 予算を作成して国会に提出すること。

六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

(法律及び政令への署名)
第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

(国務大臣の特権)
第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、訴追の権利は、これにより害されない。


   第六章 司法

(裁判所と司法権)
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。

3 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。 【新設】

4 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

(最高裁判所の規則制定権)
第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

2 裁判の当事者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。

3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

(裁判官の身分保障)
第七十八条 裁判官は、心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。

(最高裁判所の裁判官)
第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。

2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。

2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

3 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

4 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、やむを得ない事由により法律をもって行う場合であって、裁判官の職権行使の独立を害するおそれがないときを除き、減額することができない。

6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

(下級裁判所の裁判官)
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。

2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、やむを得ない事由により法律をもって行う場合であって、裁判官の職権行使の独立を害するおそれがないときを除き、減額することができない。

2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

(法令審査権と最高裁判所)
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

(裁判の公開)
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。

2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない。


   第七章 財政

 (財政の基本原則)
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

2 財政の健全性の確保は、常に配慮されなければならない。 【新設】

(租税法律主義)
第八十四条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。

(国費の支出及び国の債務負担)
第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

(予算)
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。

2 当該会計年度開始前に前項の議決がなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を経るまでの間、必要な支出をすることができる。 【新設】

3 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 【新設】

 (継続費)【新設】
第八十六条の二 数年度にわたる事業であって、特に必要があるものについては、法律の定めるところにより、あらかじめ国会の議決を経て、数年度にわたる支出をすることができる。

(予備費)
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 (皇室財産)
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

 (公の財産の用途制限)
第八十九条 公金その他の公の財産は、社会的儀礼の範囲内にある場合を除き、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のために支出し、又はその利用に供してはならない。

2 公金その他の公の財産は、国若しくは公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

(決算の検査及び国会の承認)
第九十条 内閣は、国の収入支出の決算について、すべて毎年度会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度に、その検査報告とともに国会に提出し、その承認を受けなければならない。

第90条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

 (財政状況の報告)
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


   第八章 地方自治

(地方自治の本旨) 【新設】
第九十一条の二 地方自治は、地域における住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として、行われるものとする。

 (地方自治体の役割等) 【新設】
第九十一条の三 地方自治体は、住民の福祉の増進を図るため、住民の協働を基本として、地域における行政を実施する役割及びそれらに係る責任を担う。

2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負う。

3 住民は、その属する地方自治体の運営に参画するよう努めるものとする。

(国及び地方自治体の相互の協力) 【新設】
第九十一条の四 国及び地方自治体は、地方自治の本旨に基づき、適切な役割分担を踏まえて、相互に協力しなければならない。

 (地方自治体の種類) 【新設】
第九十一条の五 地方自治体は、基礎地方自治体及び広域地方自治体とする。

2 地方自治における行政は、基礎地方自治体によることを基本とし、広域地方自治体は、これを補完する役割を担う。

 (地方自治体の組織等)
第九十二条 基礎地方自治体及び広域地方自治体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて法律で定める。

 (地方自治体の機関及び直接選挙)
第九十三条 地方自治体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民が、直接選挙する。

(地方自治体の権能)
第九十四条 地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

(地方自治体の財務及び財政措置) 【新設】
第九十四条の二 地方自治体の経費は、その分担する役割及び責任に応じ、地方税のほか、当該地方自治体が自主的に使途を定めることができる財産をもってその財源に充てることを基本とする。

2 国は、地方自治体が、地方自治の本旨に従い、その事務を適正に処理すべきことに配慮しつつ、法律の定めるところにより、前項の財源の確保その他必要な財政上の措置を講ずる。

(
特別法の住民投票) 【削除】
第九十五条

第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。



   第九章 改正

(改正の手続)
第九十六条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議に基づき、各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票において、その過半数の賛成を必要とする。

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体であるものとして、直ちに憲法改正を公布する。


   第十章 最高法規

 (基本的人権の意義)
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 (憲法の最高法規性等)
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 (憲法尊重擁護義務)
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。




2005/4/4

自民党新憲法起草委員会各小委員会要綱
自民党新憲法起草委員会

【前文に関する小委員会・要綱】
1、 前文作成の指針
@  新たな憲法前文の草案は、自由民主党の主義主張を堂々と述べながら、広く国民の共感を得る内容とする。
A  現行憲法から継承する基本理念(国民主権、基本的人権、平和主義)をより簡潔に記述し直すとともに、現代および未来の国際社会における日本の国家の目標を高く掲げる。
B  現行憲法に欠けている日本の国土、自然、歴史、文化など、国の生成発展についての記述を加え、国民が誇り得る前文とする。
C  「なぜ今、新憲法を制定するのか」という意義を前文で明らかにする。戦後六十年の時代の進展に応じて、日本史上初めて国民みずから主体的に憲法を定めることを宣言する。
D  憲法前文の文体が翻訳調、生硬、難解であるのに対し、新たな前文は正しい日本語で、平易でありながら一定の格調を持った文章とする。
2、 前文に盛り込むべき要素
@ 国の生成
・ アジアの東の美しい島々からなるわが国は豊かな自然に恵まれ、国民は自然と共に生きる心を抱いてきたこと。
・ 日本国民が多様な文化を受容して高い独自の文化を形成したこと。我々は多元的な価値を認め、和の精神をもって国の繁栄をはかり、国民統合の象徴たる天皇と共に歴史を刻んできたこと。
・ 日本国民が先の大戦など幾多の試練、苦難を克服し、力強く国を発展させてきたこと。
A 国の原理
・ 日本は国民が主権を有する民主主義国家であり、国政は国民の信託に基づき、国民代表が担当し、成果は国民が受けること。
・ 自由、民主主義、人権、平和の尊重を国の基本理念とすること。
・ 我々は、自由、民主主義、人権、平和を基本理念とする国を愛し、その独立を堅持すること。
・ 日本国民は人権を享受するとともに、広く公共の福祉に尽力すること。
B 国の目標
・ 内にあっては、自由で活力に満ちた経済社会を築くとともに、福祉の増進に努めること。経済国家にとどまらず、教育国家、文化国家をめざすこと。中央集権を改めて地方自治を尊重すること。
・ 外に向けては、国際協調を旨とし、積極的に世界の平和と諸国民の幸福に貢献すること。地球上いずこにおいても圧政や人権侵害を排除するための不断の努力を怠らないこと。地球環境の保全と世界文化の創造に寄与すること。
C 結語
・ 明治憲法(大日本帝国憲法)、昭和憲法(現行日本国憲法)の歴史的意義を踏まえ、日本史上、初めて国民自ら主体的に憲法を定める時機に到達したこと。
・ 日本国民およびその子孫が世界の諸国民と共に、更なる正義と平和と繁栄の時代を生きることを願い、国の根本規範として、国民の名において、新たな憲法を制定すること。


【天皇に関する小委員会・要綱】
一. 憲法上の位置づけ
○ 前文との関連
天皇がわが国の歴史、伝統及び文化と不可分であることについては共通の理解が得られたが、前文においても「天皇」について言及するべきか否かについては、賛否両論があった。
○ 本則中の位置づけ
天皇の規定は、現行どおり第一章に位置づけること。
二. 象徴天皇制
現行の象徴天皇とする。なお、元首と明記すべきとの意見もあった。
三. 皇位継承及び継承順位
皇位継承資格や継承順位については皇室典範において規定すること。
なお、皇室典範については、有識者会議の意見を参考にすること。
四. 天皇の国事行為等
○ 国事行為の表現の明確化について
国事行為中「国会議員の総選挙(7条4号)のように、文言の不正確な点を修正すること。
○ 「公的行為」について
憲法に定める「国事行為」と私人としての「私的行為」以外の皇位として、「象徴としての行為(公的皇位)」が幅広く存在することに留意すべきである。

【安全保障及び非常事態に関する小委員会・要綱】
1. 戦後日本の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、これを今後とも重視することとともに、我が国の平和主義の原則が不変のものであることを盛り込む。
さらに、積極的に国際社会の平和に向けて努力するという主旨を明記する。
2. 自衛のために自衛軍を保持する。
自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる。
3. 内閣総理大臣の最高指揮権及び民主的文民統制の原則に関する規定を盛り込む。
検討事項
1 軍事裁判所
2 非常事態
3 安全保障基本法
4 国際協力基本法

【国民の権利及び義務に関する小委員会・要綱】
@ 権利と義務の規定の全体について
○ 基本的人権と国民の義務に関する10条から40条に関しては、おおむね存置することとするが、A以降の点については修正を加えるべきである。
○ 各条文の主語が、「すべて国民は…」や「何人も…」であったり、主語がなかったりとまちまちであるので、この際、主語を整理すべきである。
○ 「個人の権利には義務が伴い、自由には責任が当然伴う」との趣旨の文言を前文に明記するか、現行12条(自由、権利の保持義務)で言及すべきである。
* 前文に関する小委員会との調整が必要。
A 基本的人権の不可侵規定(11条)について
○ 第10章の最高法規を削除することとなった場合は、97条(基本的人権の由来特質)の規定は、11条に包含すること。
* 改正及び最高法規に関する小委員会との調整が必要
B 公共の福祉(12、13条)について
○ 現行の「公共の福祉」の概念は曖昧である。個人の権利を相互に調整する概念として、または国家の安全と社会秩序を維持する概念として明確に記述すべきである。
○ 「公共の福祉」の概念をより明確にするため、「公益」あるいは「公の秩序」などの文言に置き換える。
○ 「すべての国民は、個人として尊重される」に加えて、「自己の尊厳を保持しなければならない」ことを追加する。なお、「自己の尊厳」については、前文に書くべきとの意見もある。
* 前文に関する小委員会との調整が必要。
C 平等の原則(第14条)について
○ 「人種、信条、性別、社会的身分」に加えて、「障害の有無」によっても差別されないことを付け加える。
○ 「門地」は過去の華族、士族、平民などの身分制を指すが、実態がないことや、広い意味の社会的身分に吸収されるため、削除すべきである。
D 権利規定で一部修正すべき点
a.信教の自由(20条)について
○ 政教分離原則は維持すべきだが、一定の宗教的活動に国や地方自治体が参加することは、社会的儀礼や習俗的・文化的行事の範囲内であれば、許容される。
* 国などが参加する一定の宗教的活動としては、地鎮祭への関与や公金による玉串料支出、公務員等の殉職に伴う葬儀等への公金支出などが考えられる。なお、社会的儀礼の範囲を超える多額の公金支出は認められない。
* 89条(公の財産の使用制限)のうち、「宗教上の組織若しくは団体の使用、便益、維持のため」公金を利用してはならないとの条文を変更すべきだが、財政に関する小委員会との調整が必要。
○ 国や地方自治体は、特定の宗教や宗派を教育することは出来ないが、一般的な宗教に関する教育は実施できる。
* 「一般的な宗教に関する教育」とは、それぞれの宗教が持つ特徴や文化的・歴史的要素、あるいは社会や日常生活における宗教の役割などを教えることであり、特定の宗教や宗派を教え、その信仰を強要して改宗を迫るものではない。

b.表現の自由(21条)について
○ 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は保障されるが、青少年の健全育成に悪影響を与えるおそれのある有害情報や図書の出版・販売は、「公共の秩序」に照らして、法律によって制限されうることを追加する。
* 「思想・表現の自由」は基本的人権の中でも最も重要な概念であるが、有害図書の氾濫という現状を考えるとその一部制限はやむをえない。

c.結社の自由(21条)について
○ 暴力的破壊活動を行う結社、あるいは犯罪を目的とする結社は、「公共の秩序」に照らして、法律により制限されうることを追加する。

d.財産権(29条)について
○ 第1項の「財産権は、これを侵してはならない」を、「財産権は保護されるべきだが、土地に関しては現在及び将来の国民のための限られた資源であることに鑑み、公益が重視されるべきである」という趣旨の文言に換える。
○ 財産権が一部制限される目的として、「公益」の維持に加え、「良好な環境(景観を含む)の保護」を加える。
D 追加すべき新しい権利規定
a.国民の知る権利(情報アクセス権)
○ 国及び地方自治体は、その諸活動を国民に説明する責任を有する。
○ 国民の国などに対する情報開示請求権を明記する。その要件は法律によって規定される。

b.国民の個人情報などを守る権利
○ 国民の個人情報や肖像権及び名誉は、保護されなければならない。
○ 国や地方自治体、ならびに法律によって定められた情報管理者は、国民や家庭の個人情報を保護しなければならない。

c.犯罪被害者の権利
○ 犯罪被害者及びその家族・遺族は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇が保証されなければならない。(犯罪被害者等基本法の理念からの引用)
* 現行憲法は犯罪加害者や刑事被告人の権利擁護(33〜40条)に偏っており、被害者の権利を守るためには従来の基本的人権規定の適用だけでは十分ではない。被害者の人権擁護の必要性を明記してバランスを確保すべきである。

d.環境権
○ 国民は、現在から将来に亙って、「公益」に反しない限り、良好な環境の下で生活する権利を有する。
* 産廃の不法投棄や汚染物質の流出、さらには地球温暖化の脅威などに対抗して、良好な環境の下、健康で文化的な生活を享受するためには、25条の生存権の規定だけでは不十分である。

e.知的財産権
○ 29条の一般的財産権にあわせて、知的創造力を高め、活力ある社会を実現するため、知的財産を保護する制度の整備に努めることを国に課する。

f.司法への国民参加
○ 裁判員制度の施行(平成21年度)に伴い、司法への国民参加(権利と義務の両方)に関する規定を置く。
* この義務については第6章の司法の部分で述べるべきとの意見もあるが、司法に関する小委員会との調整が必要。
E 追加すべき新しい責務
* 国民一人ひとりが主人公として国づくりに参加する中で、その責任を自ら進んで分担することを明らかにする趣旨で、「責務」という文言を使う。これは裁判所において具体的に強制することが可能な「義務」ではなく、幅広く抽象的な訓示規定を意味する。

a.国防の責務
○ 国家の独立と国民の安全は、国の責務であると同時に、国民の不断の努力により保持されなければならない。
* 「国防の責務」は具体的条文に規定するよりも、前文に記述したほうが望ましいとする意見もあるが、その際は前文に関する小委員会との調整が必要。

b.社会的費用を負担する責務
○ 国民は納税の義務(30条)に加えて、社会保障制度の保険料など社会的費用を負担する責務を有する。
* 25条の生存権の条項に入れ、「国が社会福祉、社会保障の向上に努める際、国民も社会的費用の負担によって協力する責務を有する。」とする意見もある。
* この責務は法律事項に落とすべきとの意見もある。

c.家庭等を保護する責務
○ 国民は夫婦の協力と責任により、自らの家庭を良好に維持しなければならない。
○ 国民は自己の保護下にある子どもを養育する責務を有するとともに、親を敬う精神を尊重しなければならない。
○ 国及び地方自治体は、家庭の社会的、経済的及び法的保護を保証しなければならない。
○ 国民は相互の協力と参加により、地域社会の秩序を良好に維持しなければならない。
* これらの責務は具体的条文に規定するよりも、前文に記述したほうが望ましいとする意見もあるが、前文に関する小委員会との調整が必要。
* 一方、これらの責務を24条(家族関係における個人の尊厳と両性の平等)に加えるという案、法律条項に落とせばよいとする案もある。

d.生命の尊厳を尊重する責務
○ 国民は生命の尊厳を尊重しなければならない。
○ 国は、生殖医学や遺伝子技術の濫用(例えばクローン人間の製造など)から、生命の尊厳を保護しなければならない。
* 前文に記載すべきとの意見もあるが、前文に関する小委員会との調整が必要。

e.憲法尊重擁護の義務
○ 第10章の最高法規を削除することとなった場合は、99条(憲法尊重擁護の義務)は、第12条で国民の立場に加えて、為政者の立場で憲法尊重擁護義務を触れるか、あるいは前文で触れるべきである。
* 改正及び最高法規に関する小委員会、及び前文に関する小委員会との調整が必要。

f.環境を保護する責務
○ 国及び地方自治体は、国民に対して良好な環境を維持する義務を負う。
○ 国及び地方自治体がこの責務を遂行する際、国民は環境保護の重要性を認識し、国などに協力する責務を有する。

【国会に関する小委員会・要綱】
 (※印を付した論点は、内閣に関する小委員会における議論と関連した項目であることを示す。)
一. 国会の構成等について
1. 国会は二院制とすること。
* なお、一院制とすべきとの意見があった。
2. 二院制とする場合は、参議院の決算審査の充実など両議院の役割分担・議員の選出方法について見直すべきであるとの意見があった。
二. 国会と内閣との関係
※1 内閣総理大臣の選出等について
現行どおりとすること。
※2 国務大臣の任命について
現行どおりとすること。
* なお、国務大臣は全員国会議員でなければならないとする等の意見があった。
※3 衆議院の解散要件について
衆議院の解散については、@現行どおりでよい(いわゆる7条解散を認める)とする意見と、A衆議院を解散できるのは、現行憲法69条の場合に加えて、本予算案又は内閣提出の重要な法律案が成立しなかったときに限るものとすべきであるとの意見があった。
※4 内閣の法案提出権について
現行どおりとすること。
※5 国務大臣の議院出席義務について
内閣総理大臣その他の国務大臣の議院又は委員会への出席義務を緩和し、「職務遂行上出席が困難な事情」がある場合には、「職務代行者(副大臣等)」を代理出席させることができることとすること。
三. 議事の定足数について
議事の定足数の規定は廃止し、議決の定足数のみの規定とすること。
四. 政党の位置づけについて
政党について憲法に位置付けるべきであるとの意見があった。

【内閣に関する小委員会・要綱】
 ※印を付した論点は、国会に関する小委員会における議論と関連した論点であることを示す。 
一. 行政権の主体等について
1  行政権の主体について
「衆議院の解散権」、「自衛隊の指揮権」及び「行政各部の指揮監督・総合調整権」の3つを内閣総理大臣個人に専属させることにし、残余の権限は現行どおり内閣に属するものとすること。
2 いわゆる独立行政委員会について
独立行政委員会が内閣に対して高度の独立性を有していることについてはそれが悪影響を及ぼしているのであればその弊害を除去するべく、各根拠法律の改正等により対処するものとすること。
二. 内閣総理大臣及び国務大臣について
※1 内閣総理大臣の選出等について
現行どおりとすること。
※2 国務大臣の任命について
現行どおりとすること。
なお、国務大臣はすべて国会議員でなければならないとする等の意見があった。
三. 国会と内閣の間の抑制均衡について
衆議院の解散については、@現行どおりでよい(いわゆる7条解散を認める)とする意見と、A衆議院を解散ができるのは、現行憲法69条の場合に加えて、本予算案又は内閣提出の重要な法律案が成立しなかったときに限るべきとの意見があった。
四. 内閣の権能について
※1 内閣の法案提出権について
現行どおりとすること。なお、その場合でも、内閣法制局の法案審査の在り方については、見直しを進めること。
※2 政令の制定(73条6号)について
73条6号を改正し、国民の権利及び義務に関する事項は、法律で定めることとし、政省令等は、法律の個別の委任がある場合に限り、制定することができるものとすること。
また、国会が、必要に応じて、政省令等の内容をチェックすることができるようにする仕組みを、法律において定めるものとすること。
五. 国務大臣の議院出席義務について
内閣総理大臣その他の国務大臣の議院又は委員会への出席義務を緩和し、 「職務遂行上出席が困難な事情」がある場合には、「職務代行者(副大臣等)」を代理出席させることができることとすること。
六. その他
「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う(763条柱書き)」の「他の一般行政事務の外」を削除すること。

【司法に関する小委員会・要綱】
1. 司法権の独立
(1) 最高裁判所裁判官の現行の国民審査制度(79条2項)
@ 最高裁判所裁判官の国民審査制度は、改める。
* 最高裁判所裁判官の適格性審査については、国民審査制度を抜本的に改革する、弾劾裁判所の機能強化を図るなどの意見と、国会、特に参議院において任命・承認を行うという意見があった。司法権独立に対する配慮や民主的基盤の確保という点から検討が必要である。
(2) 裁判官の任命・任期など(79条、80条)
@ 裁判官の任命・任期は現行どおりとする。
* なお、最高裁判所裁判官については、任期を10年とし、再任されないとすべきとのとの意見があったが、任期10年を超えた裁判官は最高裁創設以来6人で、昭和32年以降は皆無であることから、憲法上再任すべきでないと明記する必要はないと思われる。
(3) 裁判官の報酬(79条6項、80条2項)
@ 現行憲法79条6項及び80条2項に、経済情勢又は財政状況により公務員の給与が一斉に引き下げられる場合など、司法権の独立を不当に侵害するとはいえないような場合には、裁判官の報酬を減額することができる旨の明文規定を置く。
2. 裁判所の組織、権限等
(1) 違憲審査制のあり方(81条)
@ 憲法裁判所は、設けない。
* 違憲審査制の機能強化を求める意見もあったが、国会が国権の最高機関であるという規定(41条)との関係もあり、憲法裁判所設置については、慎重意見・反対意見が多数を占め、現行の付随的審査制維持が多数であった。
(2) 軍事裁判所について(安保小委関連)
@ 軍事裁判所設置については、第9条改正に伴い設置すべきとの意見もあったが、最高裁判所を終審とする軍事裁判所を設けることは、現行憲法の改正を必要としないのではないかと思われる。
(3) 行政訴訟について
@ 行政訴訟については、憲法事項とせず、法律事項とする。
(改正行政事件訴訟法の4月1日施行)
3. その他
(1) 裁判の迅速化について
@ 民事事件においても迅速な裁判を受ける権利を有する旨の明文規定を置くべきとの意見と慎重意見があり、結論に至らなかった。(国民の権利・義務小委関連)
(2) 司法への国民参加について(国民の権利・義務小委関連)
@ 司法への国民参加に関する明文規定を置くべきとの意見があったが、これを司法の章に置くべきか、国民の権利及び義務の章に置くべきかについては、調整が必要である。
(3) 裁判の公開について(82条1項・2項)
@ 裁判の公開原則の見直しを求める意見があったが、現行憲法82条2項において、「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる」と規定されているため、公開原則の見直しのために憲法を改正する必要はない。
ただし、軍事裁判所設置の場合には、軍事裁判所の審理を原則非公開とする法律上の手当てが必要となる。

【財政に関する小委員会・要綱】
1. 健全財政主義
健全財政に関する訓示的な規定を憲法上置く。
2. 予算が成立しなかった場合の対応
予算が成立しなかった場合に、必要最小限の支出が行われるよう憲法上に規定を置く。
3. 複数年度予算の編成
財政民主主義の観点から単年度主義の原則は維持しつつ、年度を跨る手当てが必要なものについては、現在法律で規定されている継続費等の制度を活用し、その弾力的な運用で対応する。
4. 私学助成
現行でも合憲とされている私学助成については、違憲の疑念を抱かれないような表現とする。
5. 決算と会計検査院
・ 決算審査の充実、予算へのフィードバック、予算執行面の透明性の向上を図る観点から、決算について、国会の役割を明確化する規定を憲法上に置くとともに法律上の手当てを行う。
・ 会計検査院の位置付けについては、現行どおり独立性を確保する。

【地方自治に関する小委員会・要綱】
一. 地方自治の理念、国と地方の役割分担と相互協力
1  地方自治体は、住民の福祉を増進するため、地域における行政を住民相互の協働に基づき自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うとともに、これに伴う責任を果すこととすること。
2 住民は、その属する地方自治体の役務をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負うとともに、その地方自治体の運営に参画するように努めることとすること。
3 国は、地方自治体の役割を尊重することを基本としてその本来果すべき役割を適切に担い、国と地方自治体は、それぞれの役割分担を踏まえ相互に協力することとすること。
二. 立法原則、地方自治の本旨
地方自治体に関する法律は、住民自治と団体自治を基本とする地方自治の本旨に基づいて定めることとすること。
三. 地方自治体の事務処理権能、条例制定権
地方自治体は、事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で、条例を制定することができることとすること。
四. 地方自治体の機関
【第一案】
1 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例、予算その他の重要事項を議決する機関として、議会を設置することとすること。
2 地方自治体の議会の議員は、その地方自治体の住民が、直接これを選挙することとすること。
3 地方自治体の長は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の直接選挙その他の民主的な方法により選出することとすること。
【第二案】
1 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例、予算その他の重要事項を議決する機関として、議会を設置することとすること。〔第一案の1と同じ〕
2 地方自治体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の公務員は、その地方自治体の住民が、直接これを選挙することとすること。
五. 地方自治体の種類
【第一案】
1 地方自治体は、基礎自治体及びこれを包括し、補完する広域自治体とすることとすること。
2 基礎自治体及び広域自治体は、法律でこれを定めることとすること。
3 地域における事務の処理は、基礎自治体によることを基本とし、広域自治体はこれを包括し、補完する役割を担うものとすることとすること。
【第二案】
1 地方自治体は、基礎自治体及びこれを包括し、補完する広域自治体とすることとすること。〔第一案の1と同じ〕
2 基礎自治体及び広域自治体は、法律でこれを定めることとすること。〔第一案の2と同じ〕
六. 地方自治体の財政
1 地方自治体は、法律の範囲内で、条例の定めるところにより、地方税を課すことができることとすること。
2 地方自治体の分担する役割及び責務に応じた財源は、地方税のほか、地方自治体が自主的に使途を決定できる財源をもってこれに充てることを基本とすることとすること。
3 地方自治体の自主性及び自立性を尊重し、その行うべき役務の提供を確保するとともに、2の理念を達成するため、法律の定めるところにより、必要な財政措置を講ずることとすること。
4 地方自治体は、合理的かつ効率的な財政運営に努め、国や他の地方自治体の財政に累を及ぼすことのないようにすることとすること。
※ 4については、「財政」の章における健全財政に関する規定との平仄を合わせることが考えられる。
七. 地方自治体の違法な行為の是正、政府の違法な行為からの救済
地方自治体の事務の処理が法律に反している場合の是正及び地方自治体に関する政府の事務の処理が法律に反している場合の救済については、法律で定めることとすること。
八. 住民投票
地方自治特別法に対する住民投票制度(95条)は、廃止することとすること。

付記 新憲法起草委員会への要望事項
一. 「地方自治」の前文への明記について
新憲法草案の前文には、「地方自治」に関する記述を盛り込むべきであるとの意見が多く出された。
二. 法律又は条例の規定に基づく住民投票制度について
法律又は条例の規定に基づく住民投票制度の在り方については、地方自治体における議会の役割との関係等を整理し、法律において、適正にこれを位置づけるよう検討するべきであるとの意見が多く出された。

【改正及び最高法規に関する小委員会・要綱】
  【改正規定について】
<国会の発議>
・ 憲法改正案の原案の提案権を国会議員に限定する。
・ 国会による発議の要件については、「各議院の総議員の過半数の賛成」に緩和する。
※ この点については、天皇制、平和主義、基本的人権、改正手続など、憲法の基本に関わる規定の改正の発議はより慎重な手続で行うべきとの有力な意見もあった。
<国民投票による承認>
・ 現行上、憲法改正には必ず国民投票を行わなければならないとされている点(強制的国民投票制)については、これを維持する。
・ 国民投票については、特別の国民投票として行うことに限定する。
・ 国民投票における承認の要件は、「有効投票の総数の過半数の賛成」とする。
<天皇の公布>
・ 天皇による公布の規定は、現行のまま維持する。
【最高法規】
最高法規の章については、現行のまま維持する。



2004/11/17

自民党憲法改正草案(たたき台)
〜「己も他もしあわせ」になるための「共生憲法」を目指して〜

はじめに〜基本的考え方〜

 日本国憲法(昭和21年憲法)は、国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義の三つをその基本的原理としている。この日本国憲法が、わが国の民主主義国家としての戦後の発展の基礎を再構築する上で非常に大きな役割を果たしてきたことについては、これを高く評価すべきであり、また、この三つの基本的原理については、今後ともこれを発展維持していくべきであることは、ここで改めて再確認しておく必要がある。

*憲法改正を話題にするときに、いまだに見られる「復古的」との誤解を完全に払拭するためにも、又、あくまでも今回の憲法改正が、現行憲法の「発展」であることを明確にするためにも、現行憲法の三つの基本的原理は今後とも堅持すること(厳密にいえば、「平和主義」などについては一部修正を加えて維持するので「発展・維持」と表現)を、冒頭で宣言したもの。

しかし、これらの基本的原理が理念として定着する一方で、これを経済発展至上主義や、極端な利己主義、偏狭な一国平和主義というように誤解するなどさまざまな歪みが露呈してきていることも事実である。そして、日本国憲法施行後、60年近くを経た内外の諸情勢の変化等にかんがみるとき、これからのわが国の進むべき方向性を指し示した新たな国家像を、国家の基本法であり、国民自らが制定する「憲法」の中にこそ盛り込むべきではないか・・・このことの必要性を痛感する次第である。

*つまり、この憲法改正草案作成の基本的姿勢は、復古的なもの(戦前回帰)ではなくて、徹底的に未来志向の姿勢なのであり、今日までのわが国の歴史を直視した上で、その悪しきを反省し、よきものは後世に伝えていこうというもの(歴史を全否定も全肯定もしないで、素直に歴史に学ぶ姿勢)であることを、ここで改めて強調しておく必要がある。

このようなことを踏まえて、私達の考える新しい国家像(憲法像)の理念を提示すれば、それは次のようなものである。

 まず、第一に、新しい憲法は、日本国憲法の三つの基本的原理を、人類普遍の価値として発展させつつも、わが国のこれまでの歴史、伝統及び文化に根ざした固有の価値、すなわち、人の和を大切にし、相互に助け合い、平和を愛し命を慈しむとともに、美しい国土を含めた自然との共生を大事にする国民性(一口で言えば、それらすべてを包含するという意味での「国柄」)を踏まえたものでなければならない。

 そもそも、(a)「個人の尊厳」を究極・最高の価値とする「基本的人権の尊重」の原理は、「みんなのしあわせ」を実現しょうとする憲法の根本的価値であり、また、(b)戦争のない平和な世界、更には安心して暮らせる自然・地球環境の保全を含む「平和主義」の原理は、そのための土台である。そして、(c)それを実現するための統治機構の原理が「国民主権」の原理なのであって、これら三つの基本的原理を普遍的価値(基礎)として措定した上で、わが国の固有の価値=「国柄」をその応用型として構築することは、「日本の顔」が見える新しい憲法の重要な要素である。新しい憲法においては、このような我が国及び日本人としてのアイデンティティーを確認してこそ、真の国際社会化に信頼される国家となり、また、真の国際人となることが出来るのである。

* 本憲法草案の第一のポイントは、我が国の「国柄」を体現した憲法でなければならないことを明記している点である。そこでいう「国柄」とは、従来意味されてきたような復古的なもの(1895年〜1945年までの戦前の一時期に考えられた「国体」ではなく、平和を愛し、命を慈しむとともに、草木一本にも神が宿るとして自然との共生をも大事にするような平和愛好国家・国民という「国柄」であり、更に付言すれば、そこに言う歴史には、第二次世界大戦における敗北の歴史をも含めたものである。すなわち、戦争から得た貴重な教訓としては、「和の精神」「平和を愛する国民性」を改めて再確認したことであり、新しい憲法は、それを進化・高度化したものといえる。)

 そもそも、人類普遍の原理とされる憲法の三つの基本的原理もすべて上記のような我が国の「国柄」と調和しこそすれ、矛盾するようなものでは決してないことも、改めて確認しておく必要がある。
* このような「国柄」を説得力をもって説明するためには、我が国の歴史を概観することも必要かもしれない。@この島国の中で、長い時間かけて自然と調和し、他人と相和し、平和を愛する国民性が養われてきた歴史、A明治維新後の近代国家としてのキャッチ・アップの国づくりの歴史、B敗戦にいたる戦争への歴史、C戦後の復興の過程でのキャッチ・アップの歴史、といった具合である。
 そして、今まさに、激動の時代に突入しているのであり、良きものを残し、反省すべきところは反省して、未来に向かっていこう、というわけである。

第二に、国民の誰もが自らを誇りにし、国際社会化に尊敬される「品格ある国家」を目指すということである。それは同時に、科学技術の進歩や少子化・高齢化の進展など新たな課題を的確に対応しつつも、人間の本質である「社会性」が、自立し共生する個人の尊厳を支える「器」であることを踏まえ、家族や共同体が、「公共」の基本をなすものとして位置付けられるものでなければならない。

 そもそも、二一世紀における現代憲法は、国家と国民を対峙させた権力制限規範というにとどまらず、「国民の利益ひいては国益を護り、増進させるために公私の役割分担を定め、国家と地域社会・国民とがそれぞれに協働しながら共生する社会をつくっていくための、透明性あるルールの束」としての側面をも有することに注目すべきである。
 そういう実質を伴った国家・社会を構築して初めて「品格ある国家」となることが出来、国際社会において尊敬され、名誉ある地位を占めることが出来るのである。

* 本憲法草案の第二のポイントは、誤った個人偏重主義を正すために、公共(国家や社会)の正しい意味を再確認させること、そして、それが単なる「国家主義」の復活ではなくて、自立し共生する個人の尊厳に裏打ちされた「品格ある国家」でなければならないこと、である。 

私たちが目指す、このような新しい憲法を一言で表現するとすれば、それは「己も他もしあわせに」(更には「自国も他国もしあわせに」)をスローガンとした「共生憲法」ということができる。

 *第1章「総則」に続けて、我が国の「国柄」を象徴する「天皇制」を第2章においた。後は立憲主義国家の憲法の事例にならって、憲法の目的ともいうべき「人権宣言」にあたる条項(第3章)を先にし、(同様の趣旨から、第4章・平和主義条項もこれと合わせて)、それを担保する「統治機構」に関する規定を後に置いてみた。(第5〜7章)。以上のいわば「平時」の条項を規定した後に、「非常時」に関する条項(第8章)を置き、最後に、改正条項(第9章)を置く、という構成にした。

 
第一章 総則

* 三つの基本的原理を発展的に拡充して確認するとともに、我が国の「国柄」を象徴する天皇制を明確に位置付けるために、冒頭に「総則」の規定を設けた。併せて、他国の憲法に例が見られる「領土」や「国旗・国歌」に関する規定なども設けた。

1. 象徴天皇制と国民主権の原理
・ 我が国は、天皇を象徴とする自由で民主的な国家であり、その主権は、国民に存し、すべての国家権力は国民に由来することを確認する。 
・ 国民は代表者を通じてその主権を行使するという「議会制民主主義」の原則を定めるとともに、すべての国民は、主権者として、自立と共生の精神にのっとり、その権限を行使するものとすること。
*第一段落は、天皇制と国民主権の関係を定めたものであるが、同時に、我が国の「国柄」を「(天皇を象徴する)自由で民主的な国家」と位置付けている。

2. 基本的人権尊重の原理
・ 我が国は、法の支配に服し、法秩序の至高の価値である「個人の尊厳」を基本として、自立と共生の理念にのっとり、すべての人々の生命、自由及び幸福追求の権利を最大限に尊重することを定めるものとすること。
* ここにいう基本的人権の尊重は、誤解された「個人主義」=利己主義とは異なり、他人の権利の尊重と両立しなければならないという「共生の原理」が含まれているものである。そのことは、冒頭の、「基本的考え方」でも示した通であるが、より具体的には、第三章の人権の章の冒頭(第一節の1)に規定されている。

3. 発展・拡充された新たな平和主義の原理(環境保全主義を含む) 
・ 我が国は、国際社会の趨勢としての戦争放棄の思想を堅持しつつ、国際社会と協働して、積極的に国際平和の実現に寄与することを宣言するものとする。
・ 戦争が最大の環境破壊であることはいうまでもないが、世界の人々を脅かすのは戦争だけではないこと、すなわち、人類生存の基盤としての自然(地球環境)の保全を認識した上で、我が国は、国際社会と協力しながら、その保全に努め、人間と自然との共生に積極的に寄与することを宣言するものとすること。

* 従来の「一国平和主義」を脱し、より積極的な平和主義へと発展させるとともに、21世紀の憲法として、平和とともに人間存在の土台をなす、地球環境の保全の必要性にも言及したもの。

4. 領土
・ 我が国の領土は、・・・・・・とすること。

5. 国旗及び国歌
・ 我が国の国旗は、日章旗であることを定めるものとすること。
・ 我が国の国歌は、君が代であることを定めるものとすること。
  
6. 最高法規・憲法尊重擁護義務
・ この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないものとすること。
・ 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負うものとすること。
・ 国民は、この憲法を制定した主権者として、普段の努力によってこれを保持しなければならないものであって、これを尊重し、擁護する責務を有するものとすること。 
* 憲法の最高法規性(現行憲法第98条)とともに、憲法尊重擁護義務(同第99条)を規定したもの。尚、議論のある国民の憲法尊重用語義務については、国民はこの憲法を定めた主権者であることにかんがみ、天皇・大臣等の公権力を担う側の憲法尊重擁護義務とは区別して、憲法尊重擁護の「責務」という形で規定した。「普段の努力による保持」の文言は、現行憲法第12条に規定されているものである。


第二章 象徴天皇制

1. 天皇の地位
・ 天皇は、日本国の元首であり、日本国の歴史、伝統・文化ならびに日本国民統合の象徴として我が国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくことを確認するものとする。
 * 天皇が元首であることを明記するとともに、その「元首」の意味は、我が国の歴史・伝統・文化といった「国柄」と国民統合の「象徴」であることを定めたものであるが、そこでは「我が国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在」という表現でもって、天皇の日々の象徴としての行為(存在)の特質をより具体的にあらわして、より実態に近い「象徴性」を平易に表現している。重ねて、この象徴天皇制と国民主権の関係を明確にしている。
 
2. 位の継承(女帝の容認)
・ 皇位は世襲のものであって国会の議決した皇室典範の定めるところにより、男女を問わずに、皇統に属するものがこれを継承するものとする。
 * 女帝問題について、憲法レベルで決着することとしたものであるが、これによって基本的に「男系男子」によって受け継がれてきた天皇制(天皇家)を変質させることにならないか、更に議論が必要か。

3. 公的行為の位置付け
・ 現行憲法の第4条[国事行為の一般的規定]・6条[首相・最高裁長官の任命]・7号各号[憲法改正の公布・国会召集など十項目の行為]に定められている国事行為のほかに次に掲げる行為を、新たに「公的行為」として位置付け、これを内閣の助言と承認の下におくことによって、その責任は内閣が負うことを明確にすること。

   一 象徴としての行為(例えば、国会開会式でのお言葉、認証官任命式への臨席、外国訪問、歌会始の主宰、災害見舞いなど)
   二 皇室行為(例えば、皇室内部の諸行事の実施、宮中祭祀の主宰など)
・ 天皇は、この憲法が定める国事に関する行為及び公的行為のみを行い、国政に関する権能を有しないものとすること。

* 現行憲法においては、「天皇は、この憲法の定める国事行為に関する行為のみを行う」ものとされていることから、国事行為と私的行為以外は全く何も出来ないのか、という疑義があることから、現に行っておられる「公的行為」については、これを憲法上明確に位置付けることとした。
  その際、天皇家内部の「私的行為」とされている「皇室行為」についても、これも天皇制という伝統を支える「公的行為」として位置付けなおして、これを明文化することとした。(第一段階の第二号)
*  尚、天皇が、「国政に関する権能を一切有しない」ことについては、現憲法どおりとする。

4. その他
* 現行憲法の天皇の章(第一章)のその他の規定については、表現の整序を要する規定(例えば、第七条四号の「国会議員の総選挙」など)以外は、基本的に現行憲法どおりとする。


第三章   基本的な権利・自由及び責務

第一節総論的事項

1.基本的人権の尊重の原則とその法的性質等 
・ まず、「個人の尊厳」を究極の価値とする人間の侵すべからざる生来の権利及び人格の自由な発展の尊重ならびに法及び他人の権利の尊重は、政治的秩序及び社会平和の基礎であって、憲法は、この「個人の尊厳」を最高価値とする価値規範を体系化したものであるという立憲主義の大原則を、確認するものとすること。
・  その上で、この憲法が保障する基本的な権利・自由は、すべての公権力を拘束すること、これらの基本的権利・自由の行使は、他人の基本的権利・自由との調整を図る必要がある場合又は国家の安全と社会の健全な発展を図る「公共の価値」がある場合に限って、かつ、法律の定めるところにしたがってのみ、制限されること、ただし、いかなる場合にも、その本質的内容は尊重されなければならないことなどを定めるものとすること。  
・ 更に、この憲法が保障する基本的権利・自由に関する規定は、世界人権宣言及び我が国が批准した人権に関する国際条約に適合するようにこれを解釈しなければならないとの解釈指針を定めるものとすること。
*  基本的人権の中核的思想である「個人の尊厳」は、あらゆる公権力行使の制約原理となるものであることを明確にする(第一段落)とともに、併せて、そのような基本的人権も「公共の価値」によって制約される場合があることを規定している(第二段落)。特にこの「公共の価値」による人権制約は、学会における通説的な理解である「人権調整の場面」だけでなくて、「国家・社会の安全・健全な発展」のためにも許容される事を明確にしている。他方、第3段落は、「国際化が進展する中での国際的人権保障の観点に配慮したもので、21世紀の憲法としての斬新性を出そうとしたものである。
*  なお、現行憲法の「公共の福祉」に代えて、「公共の価値」という用語を用いたのは、「公共の福祉」の概念はやや手垢がついたものとなっているので、敢えてそれを避けた次第である。但し、この用語が適切であるかどうか(より適切な用語がないか)については、更に検討が必要と思われる。例えば、「公共の価値」のほか、「公共の利益」(読売思案で用いられている用語)、「公共の本質」「公共の意義」「公共の福利」「公共の幸せ(しあわせ)」などである。
   
2. 日本国民及び外国人の人権
・ 現行憲法と同様に、日本国民たる用件は、法律でこれを定めるものとすること。
・ 他方、グローバル化の進展等に配慮して、外国人についても、わが国が批准した国際条約及び法律の定める条件のもとで、その性質が許す限り、この憲法が保障する基本的な権利・自由を享受することを確認しておくものとする。
* 第一段落は現行憲法の第10条と同様の規定だが、第二段落は、上記1の第三段落と同様の趣旨から国際的人権保障の観点に配慮したもの。


第二節 基本的な権利・自由

1. 現行憲法の基本的な権利・自由
* 現行憲法の第3章(国民の権利及び義務)に掲げる個別の権利の内、この草稿に掲げるもの以外のものについては、必要な補充をした上で基本的に引き継ぐものとする。

2. いわゆる「新しい人権」の追加
@ 名誉権、プライバシー権及び肖像権
・ 名誉、個人及び家庭のプライバシーならびに肖像権は、これを保障すること、また、これらの権利行使を保障するため、情報の利用については、法律の定めるところにより、制限することが出来ることを明確にするものとすること。
* プライバシー保護のために、情報の利用(表現の自由)が制限されることがある旨を憲法上明確にしたところがポイントである。 
A 知る権利(情報アクセス権)
・ 国、地方自治体その他の公共団体は、国民主権の理念にのっとり、その諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにしなければならないものとすること。
・ 何人も、法律の定めるところにより、国、地方自治体その他の公共団体の保有する情報の開示を請求する権利を有するものとすること。
* いわゆる「知る権利」については、国や自治体の「説明責任」と、国民側の「情報開示請求権」という利用面から規定してみた。これは、現行の「情報公開法」の枠組みを参考にしたものである。

B 犯罪被害者等の権利
・ 犯罪及びこれに准ずる心身に有害な影響を及ぼす行為によって害を被った者及びその家族又は遺族は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳に相応しい処遇を保障される権利を有するものとすること。[具体的には、法律の定めるところにより、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことが出来るようにし、及びこれらの者がその被害にかかわる刑事に関する手続きに適切に関与する権利が保障されるものとすること。]
* 犯罪被害者の権利については、今国会に議員立法として提出が予定されている「犯罪被害者等基本法案」の基本理念を規定してみたものである。

3. 従来の権利規定の修正
@ 表現の自由と青少年の保護
・ 集会・結社及び言論、出版その他一切の表現の自由については、現行憲法の規定どおり、これを保障することとするとともに、併せて、青少年を保護するため、出版及び映像に関する規制について法律で定めることが出来る旨明確にするものとすること。
* フィンランドの憲法にならって、青少年の保護・健全育成のための規制条項を追加してみたもの。

A 政教分離
・ いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならないものとすること。
・ 国、地方自治体その他の公共団体及びその機関は、我が国の社会的又は文化的諸条件に照らし社会的儀礼又は習俗的行事とされている範囲を超えて、宗教的意義をもって特定の宗教を援助、助長もしくは促進又は圧迫もしくは干渉となるような宗教的活動をしてはならないものとすること。
* 第一段落は、現行憲法第20条一項そのままであるが、第二段落は、現行憲法第20条3項をわが国の実態に合わせて、緩和しょうとしたものである。すなわち、新道や仏教に由来しながらも学に伝統の習俗になっているようなものについては、この政教分離条項に違反するものでないことを明確にするため、最高裁判所(いわゆる緩和された「目的・効果基準」を採用したといわれる判例)等を参考にしながら規定したものである。

B 財産権の保障とその限界(及び知的財産権の保障)
・ 財産権は、これを保障するものとし、その内容及び限界は、法律で定めるものとすること。
・ 財産権は義務を伴うものであり、その行使は、同時に公共の価値に適合するようにしなければならないものとすること。また、公用収用は、公共の価値のためにのみ許されるものであり、公用収用を行う場合には、法律の定めるところにより、正当な補償が行われるものとすること。
・ 国は、知的創造力を高め、活力ある社会を実現するため、知的財産及びその保護に関する制度の整備に努めなければならないものとすること。
* 第1・2段落は、現行憲法第29条の財産権の保障に関する規定について、公共の価値による制約をより強化した形で手直ししたもの。 これによって、特に土地所有権に代表されるような財産権の行使を制限する立法はより定めやすくなるものと思われる。
* 第3段落は、知的財産権に関する保護の規定であるが、その権利性の側面を強調するのではなくて、国に対する制度的保障としての義務付けの面から規定したものとなっている。これによって、既にある「知的財産基本法」やその個別の実施法などの法律レベルでの措置を促進することになる。

C 企業その他の経済活動の自由
・ 企業その他の私的な経済活動は、自由であること。ただし、公共の価値に反し、又は安全や自由及び個人の尊厳を害するような方法で行うことは出来ないものであることを確認するものとすること。
* 現行憲法第29条(あるいは第22条の職業選択の自由)に含意されているとされる「営業の自由」について、企業その他の経済活動の自由という形で、規定したもの。

第三節 国民の責務

*  厳格な意味での「義務」(裁判所において具体的に強制可能な義務)ではなくて、幅広い抽象的な訓示的意味での義務というニュアンスを出すため、「責務」という形で規定したもの。国民のものである「憲法」が、国民を縛ろうとするのか、という素朴な批判にも応答できるように、又、出来るだけ幅広い合意が得られるような配慮・工夫をしたつもりである。

1. 国防の義務及び徴兵制の禁止
・  日本国民は、国家の独立と安全を守る義務を有するものとし、また、国家緊急事態にあっては、法律の定めるところにより、国及び地方自治体その他の公共団体の実施する措置に協力しなければならないものとすること。
・  同時に、上記の規定は、徴兵制を容認するものではないことを明確にすること。
* 第一段落で「国防の義務」「国家緊急事態における協力義務」を明記するとともに、「徴兵制復活か!?」などという懸念を払拭するため、第二段落の規定をわざわざ設けることにしたもの(なお、世界の趨勢でも、徴兵制は軍事的にも必ずしも実効的ではないものであり、職業軍人による軍隊へと変わる傾向にあるようである)。

2. 納税その他の社会的費用の負担の義務
・ 何人も、法律の定める公正な租税制度に基づいて、納税の義務を負うものとすること。
・ 何人も、共生及び連帯の理念に基づいて、法律の定めるところにより、社会保障その他の社会的費用を負担する責務を有するものとすること。
* 地域社会や国家を支えるという「共生」の精神が、財政の側面で表れたものが「納税の義務」であるということができようが、それと同時に、国民負担率などにおいて租税負担と同視される社会保障の負担についても、同じ側面から位置付けようとしたもの。


第四節 社会目的(プログラム規定)としての権利及び責務

* 第二節に掲げる「基本的な権利・自由」とは異なり、「権利」性が弱く、その保護のためには国や自治体による制度の具体化が必要な、いわゆる「制度的保障」といわれる規定に属するものを、別の説としてまとめて規定しようとしたものが本説である。そこでは、個人の権利とする部分と、国家・自治体の責務とされるものとが一体化されているものが少なくないので、「第二節・基本的な権利・自由」及び「第三節・国民の責務」の後に、「プログラム規定としての権利・責務」という形で規定している(なお、このような観点からは、現行憲法の権利規定の一部(例えば第25条の生存規定など)についても、この説の中に位置付けるような見直しが必要となろう)。
  ちなみに、このような発想は、基本的には、「人権のインフレーション」に歯止めをかけようとの趣旨に基づくものであるが、同時に、このような分類自体は、各国の憲法やEU憲法条約などにも見られるものであることにも注目したい。

1.教育の基本理念
・ 教育は、人格の完成を目指し、(a)この憲法の定める「個人の尊厳」が他人の権利の尊重を前提として成り立っているという自立と共生の精神を深く認識し、法令その他の社会通念の規範を遵守するとともに、主体的に社会の形成に参画する態度を涵養し、(b)生命を尊び、自然に親しみ、環境を保全し、よき習慣を身に付けること、また、(c)我が国の歴史、伝統・文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を涵養することを旨として行わなければならないものとすること。
* 教育こそ、国家の基礎であることにかんがみ、教育の権利・責務とは別に(最終的な条文の場所等に着いては、更に検討が必要)、教育の基本理念を定めようとするもの。ここでは、特に(a)の利己主義を廃止、自己の権利とともに他人の権利を尊重する[公共心]の育成の必要性を、強調している。なお、いわゆる「愛国心」の明記(上記(c)の部分)に関しては、教育基本法の動きとも関連して、更に検討することも必要か。

2. 家庭の保護
・ 国及び地方自治体は、家庭が社会生活において大切な共同体であり、子どもの健全育成の基盤であることにかんがみ、その社会的、経済的及び法的保護を保障するものとすること。
* 「家庭の保護」について、国・自治体の保護責務という形で規定したもの。「家族」ではなくて「家庭」としたのは、血族的な意味合いは明治憲法下における「家」制度を連想させるという復古的な色合いを払拭して、さまざまな形の「家庭」があることを容認する趣旨からである。同時に、そのような意味での、「家庭」は、社会や国家という「公共」を構成する最小の単位であって、そこで伝統や文化や人間的な慈しみの気持ちなどが伝承されていく土壌であることを、「不可欠な共同体」「子どもの健全育成の基盤」という表現で表そうとしたものである。

3. 環境権及び環境保全の責務
・ 何人も、人格の発展にふさわしい良好な環境のもとに生活する権利を有し、及びこれを保護する責務を負うものとすること。
・ 国及び地方自治体は、現在及び将来の世代の者に対し、良好な環境に生活する権利及び自らが生活する環境に関係する政策決定に影響を及ぼす可能性を保障する責務を有するものとすること。
* いわゆる「環境権」については、国民(市民)の側の「権利」(ただし、これがプログラム的な権利であることは、第二の「基本的な権利・自由」ではなくて本説に規定したことからも理解できよう)としてだけではなく、国民(市民)の責務であることを第1段落で明らかにするとともに、それは国・自治体の責務であることを、第2段落で明らかにしている。

4. 生命倫理への配慮
・ 何人も、生殖医学及び遺伝子医学の乱用から保護されなければならないことを定めるものとすること。
・ 人の胚形質及び遺伝物質ならびに臓器、組織及び細胞の移植に関しては、法律の定めるところによらなければならないこと、また、国は、当該法律を定めるにあたっては、個人の尊厳及び人格を損なわないよう、配慮されなければならないことを定めるものとすること。
* スイスの憲法規定などを参考にしながら、生命倫理に関する規定を設けたもの。
   この条項が憲法上に位置付けられることによって、生命倫理(個人の尊厳)への配慮からの学問の自由に対する法律による制限が、より適切に行われやすくなることが期待される。 


第四章 平和主義及び国際協調

* 本章では、憲法目的としての「平和主義(及び国際協調)」を定め、これを担保する手段という観点から、第八章では、「国家緊急事態・自衛軍」について定めている。すなわち、崇高な理想もそれを実現するにふさわしい制度と実力を背景にして初めてその意義を有するものであることを、明確にしようとしたものである。一般に同一の議論の中で言及されることの多い「平和主義」と「自衛軍」について同じ章の中で規定しないのは、このような論理的関係を明らかにするとともに、人権保障(第三章)と国民主権の統治機構(第五章等)との論理的関係と同様のものであることにもならったものである。

第一節 平和主義

1. 国際平和への寄与
・ 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、全世界の国民がひとしく貧困、環境破壊、薬物、国際組織犯罪、感染症、紛争、難民流出、対人地雷等の社会構造的な災禍から免れ、尊厳を維持した人間として創造的で価値ある人生を生きる権利を有することを確認するものとすること。
* 現行憲法の定める平和主義を更に発展させて、小渕内閣の主導し、国際的にも定着しつつある「人間の安全保障」の基本的な考え方を規定したもの。

2. 戦争の放棄と武力行使の謙抑性
・ 日本国民は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄すること。
・ 日本国民は、自衛または国際貢献のために武力の行使をともなう活動を行う場合であっても、それは平和的な手段によっては問題の解決を図ることが困難な場合であって、武力の行使は究極かつ最終の手段であり、必要かつ最小限の範囲内で行わなければならないことを深く自覚しなければならないことを定めるものとすること。
・ 武力の行使を伴う活動を行う場合については、事前(緊急を要する場合には事後)の国会の承認を要するものとし、その手続き及び当該活動の基準・制限その他必要な事項については、前項の趣旨に基づいて、法律で定めるものとすること。

* 第一段落は、1項の「侵略戦争の放棄」を定めたもの。したがって、この第一段落によっては、「自衛(これには、当然に、個別的・集団的自衛の両者が含まれる)や「国際貢献(国際平和の維持・創出)」のための武力行使は、禁止されておらず、容認されることになる。第2段落では、このことを前提にして、その場合であっても、武力の行使は平和的手段が尽きた最終・究極の手段であり、さらには、必要最小限の範囲内で行われなければならないことを、規定したものである。また、第3段落は、安全保障基本法(及び国際貢献基本法)の中で、国会承認その他の具体的手続き等を定めることを義務付けており、そこでは、武力行使の手続き・基準のみならず、武器使用基準などについても、規定されることになろう。
* 以上の説明を踏まえて本条項の趣旨を端的に説明すれば、本条項は、いわゆる「制限された(集団的)自衛権を認める」という立場にたつことを明確にした規定であるということが出来る。

3. 大量破壊兵器の廃絶及び非核三原則
・ 日本国民は、非人道的な無差別大量破壊兵器が世界から廃絶されることを希求し、自らはこのような兵器を製造せず、保有せず、及び持ち込ませないものとすること。
・ 上記のことに加えて、日本国民は、唯一の被爆国として、核兵器については、特に、これを製造せず、保有せず、及び持ち込ませないものとすること。
* 上記2と同様に、平和愛好国家としての我が国が率先して「大量破壊兵器の廃絶」に向けた努力をすることを、憲法レベルで規定しようとしたもの。第2段落は、事柄としては、第一段落に含まれているということも出来るが、唯一の被爆国としての我が国の「歴史」を風化させないためにも、国是としての「非核三原則」を特記したものである(表現ぶりについては、やや整理が必要か)。

第二節 国際協調

1. 国際法の国内法的効力
・ 我が国が締結した条約及び確立された国際法規は、法律に優先し、日本国内に居住するものに対して、直接に権利及び義務を生じさせることを明らかにすること。
* 解釈にゆだねられている「条約と法律」の関係について、各国の憲法規定にならって、明確に規定しようとしたもの。

2. 国際活動への積極的参加
・ 我が国は、確立された国際的機構の活動その他の国際の平和と安全の維持及び回復ならびに人道的支援のための国際的な共同活動に、積極的に参加するものとすること。
* 読売私案を参考にした規定である。「確立した国際的機構の活動」とは、現時点では国際連合によるものを念頭においているが、将来的にはそれにとどまるものではなくて、EUのような機関がアジアにも誕生するようなことがあれば、それもこれに含まれることになる。
  もちろん、現時点でも、「その他の国際の平和と安全の維持・・・・・ための国際的な共同活動」とあるから、国連の活動に限定されているわけではない。 


第五章   統治の基本機構

※ 本章では「統治の基本機構」ということで、国会・内閣(内閣総理大臣)という政治の基本機構だけではなくて、司法裁判所・憲法裁判所といった裁判所の組織についても、併せてきていしている。というのは、憲法裁判所の組織・機能は、いわば「政治」と「(通常の)司法」との境界線に位置する組織であり、これによって統治機構全体が「抑制と均衡」の働いた制度となることを期待しているという趣旨を、形式(構成)の面でも明らかにしておくのが適切と考えるからである。

第一節 国会

1 国会の権能
 国会は国の唯一の立法機関として法律を制定し、予算を議決するほか、内閣総理大臣の行政執行を監督し、この憲法が定める範囲内において司法裁判所および憲法裁判所を民主的な観点から統制するとともに、この憲法が付与するその他の権限および他の国家機関の権限とされる権限以外の一切の国政に関する権限を行使することを、確認するものとすること。
※ 国会の地位に関する「国権の最高機関」という表現(憲法第41条)は、一般に「政治的美称」と解されていること等にかんがみて、削除してある。ただし、国会は、国民代表機関として、主権者・国民に最も近い立場にある国家機関であること、そこでこそ国政の基本的方向性は決められるべきことに変わりはないのであって、その根幹が、立法権、予算の議決権、行政監視監督権等にあることを、改めて明記している。尚、権限行使について強い独立性が保障される司法裁判所・憲法裁判所についても、国会は、この憲法が定める弾劾その他の権限を行使することを通じて、民主的な観点から統制することができる旨を、明確にしている。

2 両院制及び衆参両院議員の選出方法・任期等
※ 両院制を堅持しつつも、その役割分担及び選出方法については、次のように、大幅に改めるものとしている。なお、本草案で触れていない事項(成年者による普通・秘密選挙のほか、両院議員の兼職禁止、議員歳費、不逮捕特権、免責事項等)に関する規定については、基本的に現行のままとする。

@ 両院制
国会は、衆議院及び参議院で、これを構成するものとすること。
A 衆議院議員
衆議院は法律の定めるところにより小選挙区及び比例選挙区から国民の直接選挙により選出された、全国民を代表する議員で組織し、その任期は四年とすること(ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前であっても、その解散の時にその任期は終了すること)。
B 参議院議員
参議院は、道州ごとに法律の定めるところにより選挙された議員及び法律の定めるところにより選出(推薦)された議員で組織し、その任期は六年とし、三年ごとに議員の半数を改選すること。

※ 参議院については、道州制の導入とも相まって、地域代表的な議院として構成し、その選出方法は(a) 道州議会による間接選挙による部分と、(b)有識者による任命による部分とを組み合わせてある。(道州法の導入が見送られた場合には、現行の都道府県ごとの選出ということになろう)。
※ 上記(b)の具体的な任命方法については、衆議院、内閣総理大臣、最高裁判所及び憲法裁判所のそれぞれからの推薦に基づいて任命することするのが適切であると考える。(この任命手続きは、憲法事項であるとすべきであると考えるが、更に検討が必要)。なお、任命による議院としては、例えば、首相や衆参両院議長、憲法裁・最高裁長官の経験者などが想定されるのではないか。

3 国政調査権の充実強化
@ 議院・委員会の国政調査権と少数者調査権
・ 各議院及び各議院の委員会は、それぞれ国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができるものとすること。
・ 上記の国政調査権の発動について各議院の議院○○人以上の議員からの要求があり、かつ、法律で定める期間以内にこれを不当と認める所管委員会の議決がないときは、当該所管委員会は、当該要求に基づく国勢調査を行う義務を負うものとすること。
※ 首相権限の強化(次の第二「内閣総理大臣及び行政」参照)とのバランスをとるため、国会の国政調査権の充実強化を図ることとしたものであるが、そのポイントは、上記の第二段落にある、いわゆる「少数者調査権」である。これは、議院内閣制の下では、政府や与党(国会の多数党)に支えられることになるため、通常の多数決原理では行政監視のための情報が野党には十分には来ないことに配慮したものである。つまり、国会の行政監視機能をより十分に発揮させるために、現行国会法にも、ドイツの制度を参考にした予備的調査の制度があるが、それを一部手直しをしながら憲法事項に格上げしてみたもの。

A 議会オンブズマン
・ この憲法が保障する国民の基本的な権利及び自由を擁護するとともに、国会の行政監視活動に資するため、法律の定めるところにより、国会に、議会オンブズマンを設置するもとすること。
※ 本年の衆議院憲法調査会の海外調査を参考に、人権保障・行政監視の観点から議会オンブズマンを設置することとしてみたもの。国会の行政監視活動の補助者(国会補佐機関)として位置付け、その活動内容は、国会に報告されることとなる。
なお、議会オンブズマンの具体的な権限(所管事務?)については、法律レベルにおいて、「議会オンブズマンは、行政府の活動を監視し、国民からの苦情を受け付け、及び処理し、並びにその活動内容を国会に報告することを職務とする」旨定めることとなろう。

4 衆議院の優越(法律・予算・外交事案)
※ 参議院議員の選出方法を道州議会による間接選挙と任命制に変えることに伴い、衆議院が唯一の直接公選の国民代表機関となることから、国民主権の原理に基づきその権能を強化し、法律案、予算案、外交関係の事案(条約と大使の任命)については、現行憲法の定める衆議院の優越条項を更に強化した。

@ 法律の制定手続き
・ 法律案は、国会議員のみがこれを発議することができるものとし、この憲法の定めのある場合を除いては、両議院で可決したときに、法律となるものとすること。
・ 法律案について、両議院の議決が一致しない場合又は参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後三十日以内に議決しない場合において、当該法律案を衆議院で再び可決したときは、当該法律案は法律となること、ただし、法律の定めるところにより、衆議院が、両院協議会の開催を求めることを妨げないものとすること。
※ まず、法律案については、衆議院の再議決の要件を現行の3分の2から過半数にするとともに、みなし否決の要件とされる期間も現行の60日から30日に短縮した。又、第一段落の冒頭で、法律案は、国会議員のみが発議できることとした。

A 予算の議決手続
・ 予算案は、現行どおり、衆議院に先に提出しなければならないこととするとともに、両議院の議決が一致しないとき又は参議院が衆議院から送付をうけた後三十日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とすること。ただし、法律の定めるところにより、衆議院が、両院協議会の開催を求めることを妨げないものとすること。

B 条約の承認手続き
・ 条約の締結に必要な国会の承認については、予算の例によるものとすること。
※ 次に、予算案・条約承認については、両院の議決一致しないときに現行憲法では必要とされている両院協議会の開催を、衆議院の意向による任意のものとし、予算の早期確定と衆議院の優越の強化の下に予算の早期確定を図った。

C 大使の任命手続
・ 内閣は大使を任命するに当たっては、衆議院の同意を得なければならないものとすること。
※ この大使任命についての衆議院の同意権については、上記Bと同様に外交関係処理に関する国民代表機関のコントロール権強化の発想から定めたものである。

5 参議院の優越(決算先議・司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制)
※ 他方、参議院の優越的権能については、@決算の先議権と、A司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制をさだめている。

@ 決算の先議権
・ 決算は先に参議院に提出しなければならないものとすること。
・ 決算に関する参議院の審議の結果及びその概要が衆議院に送付された場合においては、衆議院は、これを、その予算案の審議において尊重しなければならないものとすること。
※ この@は、予算の衆議院先議とのバランスにかんがみて、決算については参議院先議としたものである。これによって、予算中心の衆議院と決算中心の参議院という図式を明確にし、衆議院の決算審議・参議院の予算審議は、それぞれ他院の審議の補充・補完的なものと位置付けられることになる。
  なお、決算審議の結果は予算審議に反映させてこそ意味がでてくるものであることを考えて、参議院の慎重な決算審議の結果を衆議院は尊重する旨の規定を設けることとした。
A 司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制

・ 最高裁判所裁判官の国民審査は廃止することとし、これに代わる最高裁判所裁判官の適格性審査は、法律の定めるところにより、参議院が行うこととすること。
・ 最高裁判所及び下級裁判所の裁判官並びに憲法裁判所の裁判官の訴追及び弾劾は、法律の定めるところにより、参議院が行うこととすること。
※ 解散のない良識の府として、参議院には、裁判所に対するコントロール権限を与えるのが適切ではないか。ただし、司法裁判所のみならずかなり政治的な色彩を持ってこざる得ない憲法裁判所についてまで、衆議院のコントロールが一切及ばないとするのが適切か、については、更に検討が必要か。

6 議事手続(定足数)
・ 両議院は、それぞれその在籍議員3の分の1以上の出席がなければ、議決をすることができないものとすること。(議事の定足数は、削除するものとすること。)
※ あくまでも定足数は「議決」時点だけ必要とするものとし、「議事」を進める際にはこれを要しない(つまり、議長と発言者さえいればよい)ものとした。
なお、これは本会議に関する規定であるが、この趣旨にかんがみれば、新たな国会法においては、委員会における議事の定足数規定(現行国会法49条)も削除されることとなろう。

7 政党
 @ 政党結成・活動の自由
 ・ 政党は、議会制民主政治において、国民の政治的意思を国政に媒介する重要かつ不可欠な存在であり、その結成および活動は、憲法及び法律を尊重しそれらに反しない限り、自由であることを明確にする ものとすること。

 A 政党法の制定
 ・ 政党は、議会制民主政治における自らの役割を深く自覚し、その健全な発展につとめなければならないこと、また、政党の内部組織及び活動は、民主主義の諸原則に適合的なものでなければならないものとし、その基準については、法律でこれを定めるものとすること。
※ 通常の「結社」と同レベルで扱われている「政党」を、憲法上位置付けるとともに、その果たすべき役割を明確にすることによって、法律レベルでの政党法の制定を義務付けようとしたもの。

第二節 内閣総理大臣及び行政

※ 行政権の主体は、「内閣」ではなくて「内閣総理大臣」ときていすることによって、首相のリーダーシップがより実効的に発揮できる制度に改変しようとしたもの。内閣総理大臣及びその他の国務大臣によって構成される「内閣」の組織自態は残るものの、各国務大臣は、全て内閣総理大臣の行政権行使を補佐する存在となる。
なお、同時に、行政活動に絡む諸原則に関する規定も憲法上明記している。「下記の3」。

1 内閣総理大臣のリーダーシップの明確化
・ 行政権は内閣総理大臣に属するものとし、内閣総理大臣は、内政及び外交その他国務全般を総理し、直接に又は国務大臣を通じて間接に、行政各部を指揮監督することを明確にするものとすること。

2 内閣総理大臣の職務等
※ 現行憲法において「内閣」の職務等とされている事項について、これを「内閣総理大臣」の職務等として、首相中心の行政運営を明確にすること以外は、基本的に現行憲法の規定どおりとすること。

3 行政活動の諸原則
 次の事項を、「行政活動の諸原則」として定めるものとすること。
 @ 行政執行の原則
・ 国の行政は、国民全体の利益に奉仕し、客観的妥当性を保持しつつ、効率性の原則に従って、正義及び法律に基づいて、執行されなければならないこと。
A 国の行政機関の法定主義
・ 国の行政機関は、法律に基づいて、これを設置するものとすること。
B 公務員の地位
・ 全ての公務員は、国民全体の奉仕者であって、法律の定めるところにより、その政治的中立性の保持に努めなければならないものとすること。
C 国家賠償請求権
・ 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体に対して、その賠償をもとめることができるものとすること。
※ @は民主主義の原則を確認したものであり、Aは行政組織に対する国会のコントロールを定めたものである。BやCは、現行憲法の規定(国民の権利・義務の章に規定されている)を移動させてきただけのもの。

第3節 国会と内閣の関係

1 内閣総理大臣の任命
内閣総理大臣は、衆議院議員の中から、衆議院の議決で、これを指名するものとすること。
※ 国会の組織改変によって、衆議院のみが国民代表機関となったので、内閣総理大臣は当然に衆議院議員であることを要するものとしたもの。なお、つぎの2@Aの規定も、これと同趣旨の規定である。

2 国務大臣の任命
@ 衆議院議員及び与党との関係
・ 内閣総理大臣が国務大臣を任命するに当たっては、国務大臣は、すべて衆議院議員の中から選ばれなければならないものとすること。ただし、衆議院議員でない者を国務大臣に任命することについて、衆議院の承認を得た場合又は当該衆議院議員でない者が次の衆議院議員選挙に立候補する旨の宣言をした場合については、この限りでないものとすること。
・ 前項ただし書きの場合においても、衆議院議員でない国務大臣は国務大臣の総数の3分の一を超えてはならず、また、次の衆議院議員選挙に立候補する旨の宣言をした国務大臣が当該選挙で落選した場合には国務大臣を辞さなければならないとすること。
※ 第一段落のただし書と第二段落は、これまでの議論を踏まえて、議員内閣制下における政治主導をより強化したものである。
※ 尚、政府と与党との関係に関しては、第一の7に定める法律(政党法)等において、「内閣総理大臣は、政府与党の執行部の職のうち第一の7に定める法律(政党法)の定める職にある者については、これを国務大臣として任命するものとする」旨の訓示規定を置くなどして、政府・与党一体の原則を担保することも考えられる。

A 参議院議員との兼職禁止
・ 国務大臣は、参議院議員と兼ねることができないものとし、参議院議員が国務大臣に任命されたときは、参議院議員を辞職したものとみなすものとすること。

3 国会に対する内閣の連帯責任
※ 現行憲法どおり、議員内閣制の骨格はこれを維持するものとすること。

4 閣僚の議院出席・発言の権利及び義務
・ 内閣総理大臣その他の国務大臣は、衆議院に議席を有すると有しないとに関わらず、いつでも議案について発言するため各議院又はその委員会に出席することができるものとすること。また、答弁又は説明のために各議院又はその委員会から出席を求められたときは、自ら出席しなければならず、それが困難な場合には、法律の定めるところに従い、副大臣等をして出席させなければならないものとすること。
※ 議院内閣制のシステムからは、国務大臣の国会出席義務自体を削除するわけにはいかないが、「やむをえない事情(出席が困難な事情)」がある場合には、副大臣等の代理出席を条件にこれを解除することは、必ずしも議院内閣制に反するものとは考えられない。国会・内閣という権力相互間の重要事項であるから、憲法事項として規定したものである。

5 衆議院による内閣不信任決議と衆議院の解散(理由明示の必要性)
・ 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案が否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならないものとすること。
・ 内閣総理大臣は、上記の不信任決議案が可決され、又は信任の決議案が否決された場合のほか、議会民主政治の運営上、新たに国民の意思を問うことについて客観的かつ十分な理由があると認める場合には、その理由を示して、衆議院を解散することができるものとすること。
※ 第二段落では、不信任決議案可決の場合(69条解散)以外の一般的な解散(いわゆる7条解散)が認められることを明文定めるとともに、それが認められる場合の抽象的な要件を具体化したもの。同時に、その解散理由の明示も規定している。ただし、その適正さは、全て選挙で判断されるだけである。

第4節 司法裁判所

※ 憲法裁判所の設置に伴い、通常の裁判所については、「司法裁判所」と位置付けることとした。これは、「事件性」の要件(個別具体的な訴訟の提起があって初めて権限を行使すること)を前提とすることを「司法」作用の核心とする用例にならったものである。

1 最高裁判所及び下級裁判所の権能/裁判官の独立等
※ この司法裁判所の章については、次に特記する事項以外は、基本的に、現行憲法の「司法」の章の規定を引き継ぐものとする。

2 専門の特別裁判所
・ 行政事件、知的財産権その他の専門的事項に関する事件を処理するため、特別の裁判所を設けることができるものとすること。ただし、それらは終審裁判所として事件を処理することはできず、最高裁判所の下に設置されるものとすること。
※ 行政裁判所等の専門裁判所の設置を明文でみとめることとしたもの。ただし、それらはすべて最高裁判所への上訴の道が開かれていなければならず、これによって、法令解釈の統一性を担保しようとしたもの(その意味では、現行憲法下においても、法律で認められるものではあるが、それを憲法上明記したことに、本条項の意味はある)。

3 裁判官の報酬
・ すべて裁判官は、定期に相当額の報酬を受けるものとし、裁判官の独立を害することとなる報酬の減額は、これをしてはならないものとすること。
※ 批判の多い現行憲法79条・80条を実態に合わせて改めようとしたもの。

4 司法への国民参加
・ 司法への国民の参加に関しては、法律でこれを定めるものとすること。
※ 現行憲法の解釈として、陪審制などのように民間の陪審員の評決が裁判官を拘束するものとする制度は「職業裁判官による裁判」を受ける権利を侵害する、との主張があることにかんがみて、裁判員制度等が憲法上認容されることを明らかにしたもの。

5 司法裁判所の法令審査権(憲法判断の憲法裁判所への移送)
・ 司法裁判所(最高裁判所及び法律の定める下級裁判所)が、裁判において、その効力が問題となる法律、条例、命令、規則又は処分がこの憲法に違反すると認めるときは、その手続を中止して、憲法裁判所の裁判を求めなければならないものとすること。
※ 憲法裁判所の設置に伴い、憲法の最終的な有権解釈権は、最高裁判所ではなくて憲法裁判所に移管されるため、両者の間の調整を計った規定。

第5節 憲法裁判所の権能

@ 憲法適合性の裁判(抽象的・具体的規範統制)
・ 憲法裁判所は、一切の法律、条例、命令、規則又は処分がこの憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する一審にして終審の裁判所とすること。
・ 上記の憲法適合性の裁判は、次の各号に掲げるとおり、当該各号に掲げる者からの移送又は申し立てに基づいて行うものとすること。
一 [具体的規範統制] 司法裁判所において係属する事件の裁判に関して、当該司法裁判所から、法律、条例、命令、規則又は処分の憲法適合性の判断を求めるために移送されたとき。
二 [抽象的規範統制] 法律、条例、命令又は規則が制定(公布)されてから○○日以内に、当該法律等について内閣総理大臣、衆議院議員若しくは参議院議員のそれぞれ3分の一以上の議員から、又は条例について当該条例に係る地方自治体の首長若しくは議会の議員の3分の一以上の議員から、憲法適合性の裁判を求める申し立てがあったとき。

※ ドイツの憲法裁判所では、以上の二つの権限のほか、一般国民からの「憲法異議の訴え」を受理・審査する権限も規定されているが、あまりに過大な事務が憲法裁判所に持ち込まれることは、発足当初の制度設計と
しては必ずしも適切ではない。イタリアの憲法裁判所にならって、上記の2つの権限に限定したのは、そのような趣旨からである。

A 権限訴訟及び国民投票に関する権限等
・ @に規定するもののほか、憲法裁判所は、法律で定める事項に関する権限を行使することができるものとすること。
※ 「法律で定める事項」としては、たとえば、国と地方自治体あるいは地方自治体相互間の権限争いの裁定、国民投票の適法性の監督・審査などが想定される。

2 憲法裁判所の裁判官の任命等
・ 憲法裁判所は、○○名の裁判官で構成するものとし、その裁判官は、法律の定めるところにより、国会、最高裁判所及び内閣が推薦する名簿に基づいて、天皇が、内閣の助言と承認に基づいて、任命するものとすること。また、憲法裁判所の長官は、天皇が、内閣の助言と承認に基づいて、憲法裁判所の裁判官の中から、国会の同意を得て、任命するものとすること。
・ 憲法裁判所の裁判官の任期は○○年とし、再任されないものとすること。
・ 憲法裁判所の裁判官は、心身の故障のために職務を執る事ができないと決定された場合を除いては、法律の定める弾劾の手続によらなければ、罷免されないものとすること。
※ 憲法裁判所の構成は、かなり政治的な中立性が要求されるが、諸外国の憲法裁判所の構成例にならって、立法・行政・司法がそれぞれ推薦するシステムを採った。いずれにしても、全会一致で選任されるような人物が選ばれるような運用が望ましい。第二段落は、再任不可とすることによって、その独立性を強化しようとしたもの。
なお、第3段落の訴追・弾劾の手続は、参議院の権能とすることが考えられる。(本章第一節の5のA参照)

3 違憲判決の効力
・ 憲法裁判所が、1の@の第1号の移送(具体的規範統制)をうけて法律等の規定又は処分について違憲の判決をしたときは、当該移送に係る事件に関しては、何人もこの判決に拘束されるものとすること。
・ 憲法裁判所が、1の@の第2号の申し立て(抽象的規範統制)を受けて法律等の規定について違憲の判決をしたときは、その決定が公示された日の翌日から、当該法律等の規定は、その効力を失うものとすること。


第6章 財政

※ 現行憲法の「財政」の章(第8章)については、次に掲げる事項以外の事項については、基本的に現行憲法どおりとすること。

1 財政処理の基本原則
・ 国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣がこれを処理するものとすること。
・ 国は、健全な財政を目指して、財政を適正に維持し、及び運営をしなければならないものとすること。
※ 議論となった「財政均衡」の条項については、「健全財政」を目指す旨の訓示規定として規定してみたが、さらに検討が必要か。

2 複数年度予算の編成等
・ 内閣総理大臣は、必要があると認めたときは、法律の定めるところにより、一年を超えた期間を一会計年度として予算を編成することができるものとすること。
・ 後年度負担を伴う歳出を定める予算を編成する場合には、次世代への財政負担の責任を明確にするため、法律の定めるところにより、その理由、負担の原因及び数額その他の必要な情報を開示しなければならないものとすること。後年度負担を伴う歳出を義務づける法律を制定する場合も、同様とすること。
※ 上記の「複数年度予算の編成」「後年度負担を伴い財政支出」については、その制度の具体的内容が必ずしも明らかではなく、他の条項への影響(決算制度や予算を伴う議員立法等)などを含めて、更に検討が必要か。

3 公の財産の支出又は利用の制限(現行憲法89条)の改正
・ 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のために、これを支出し、又は利用してはならないものとすること。
※ 現行憲法89条については、宗教団体への支出の部分だけを残し、いわゆる私学助成をはじめとする慈善・教育・博愛の事業に対する部分は、削除することとした。

4 決算と会計検査院
・ 内閣は、国の収入支出の決算を、その年度の終了後速やかに国会に提出し、その議決をへなければならないものとすること。
・ 国会は、内閣から決算の提出を受けた場合には、これを会計検査院の検査に付し、その検査報告を受けた上で、これを審査するものとすること。
・ 会計検査院は、国会の付属機関とすること。
※ この規定のポイントは、決算を単なる国会への報告事項ではなくて「議決事項」として国会の関与を強めている点(第一段落)と、会計検査院を国会付属機関としたこと(第3段落)にある。なお、参議院の決算の先議権については、第4章の第1節の5を参照。


第7章 地方自治

第1節 地方自治の原理

1 地方自治体の役割
・ 地方自治体は、住民の生活の基本的な場所である基礎的共同体の重要性にかんがみて、住民の福祉の増進を図ることを目的として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとすること。
※ 地方自治の目標(地方分権の究極のねらい)は、地域住民の生活に密着した行政活動の強化充実によって住民福祉の向上にあることを確認するものである。これによって、地域社会の有するわが国特有の文化や伝統の継承にも資することとなろう。

2 国と地方自治体の役割分担の原則
・ 国は、外交、防衛等の国際社会における国家としての存立にかかわる事務、司法等の全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動もしくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割のみを担うものとし、地方自治体は、住民に身近な行政をできるだけ幅広く担うものとすること。

※ 上記1の自治体の役割と2の国と自治体の役割分担の原則、地方分権一括法によって地方自治法に追加された規定(同法上の2)を、憲法レベルに格上げしたもの。
・ 上記の地方自治に関する基本的な準則については、法律で定めるものとすること。この法律を定めるに当たっては、地域の特性に応じた多様な組織及び権限が保障されるように配慮しなければならないものとすること。
※ 現行地方自治法は、あまりにも地方自治体の活動を細かく規定していること(例えば、地方議会の議事手続や定数、付属機関の設置など)にかんがみ、今後は、その大枠のみを定め、各自治体の裁量の幅を拡大するものとしている。ただし、連邦制を採用しようというものではないので、あくまでも国会が定める法律(例えば、「地方自治基本法」というような法律)で大枠を定める、という骨格は維持することとしている。

第二節 地方自治体の種類

・ 地方自治体は、道州及び市町村並びに自治区(仮称)とすること。
・ 道州は市町村を包括し、市町村は自治区を包括するものとすること。
・ 自治区は、法律の定める手続により設けることができる任意のものとすること。
※ 自治体の種類については、広域的な自治体である道州と、基礎的自治体である市町村の2層制を基本とした。ただ、市町村合併の結果、市町村が地域住民からやや遠い存在となることに配慮し、コミュニテイ(共同体)としての一体性を維持する観点から、「自治区(仮称)」を設けることもできるようにした。

第三節 地方自治体の権限及び機関

1 地方自治行政の基本原則(補完性の原則)
@ 市町村の事務と基本条例
・ 市町村は、基礎的な地方自治体として、地域における事務を処理するものとし、その組織及び運営の基本方針については、法律の定めるところにより、基本条令を制定するものとすること。
A 自治区の事務
・ 市町村の区域内に自治区が設けられたときは、市町村は、法律の定めるところにより、その事務を自治区に処理させるものとすること。
B 道州の事務
・ 道州は、市町村を包括する広域的な地方自治体として、地域における事務のうち、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとすること。
※ 市町村こそが基礎的自治体として、基本的に地域の事務を処理すること、道州は広域的自治体として、市町村にできないことを中心に事務処理をすることを定め、いわゆる「補完性の原則」を明らかにしたもの。なお、任意の組織である自治区が設けられたときは、基礎的自治体である市町村の事務の一部を処理するものとした。

2 地方自治体の機関
@ 道州の機関
・ 道州には、その議事機関として、住民の直接選挙により選出される議員からなる議会いを設置するものとすること。
・ 道州の長は、住民の直接選挙によって選出されるものとすること。
A 市町村及び自治区の機関
・ 市町村及び自治区の機関については、当該市町村又は自治区の基本条例で定めるものとすること。
※ 各自治体の機関の選任方法については、大統領制的な仕組み、議院内閣制的な仕組み、シテイマネージャー制的な仕組みなどさまざまであり得るから、各自治体は、その規模・特質等に応じて、それぞれの自治体の憲法ともいうべき「基本条例」において自由に定めることができるものとした。
※ しかし、道州については、憲法でもって、議会の設置とその公選、首長の公選というシステムを、一律に採用することにした。ただし、首長の公選については、道州の規模にもよるが、議院内閣制の下の首相との対比で、あまりにも強力な大統領的な仕組みが適当かどうか、更に検討が必要か。

3. 地方自治体の権能
@ 事務執行権及び条例制定権
・ 地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する機能を有し、法律の範囲内で条令を制定することができるものとすること。
A 健全財政の責務と課税自主権の保障
・ 地方自治体は、自主財源を基礎とする健全な財政を目指して、財政を適正に維持し、及び運営しなければならないものとすること。
・ 国は、地方自治体の自主財源確保に資するため、法律の定めるところにより、課税自主権を保障するものとすること。
※ @は自治体の事務執行権と条例制定権について定めるもので、現行憲法94条そのままの規定であるが、Aでは、健全財政の責務規定(第一段落)とともに、要望の強い課税自主権の保障の規定(第二段落)を定めている。ただし、課税自主権の保障の具体的なイメージについては、更に検討が必要か。


第八章 国家緊急事態及び自衛軍

※ 本章については、基本的に昨年7月24日付けの「安全保障についての要綱案」をベースにし、この間の議論をはめこむ形で修文したものである。

第一節 国家緊急事態

1 国家緊急事態の布告
 内閣総理大臣は、次に掲げる国家緊急事態が生じたと認めるときは、法律の定めるところにより、その旨を布告するものとすること。
一 防衛緊急事態 外部からの武力攻撃により国家の独立又は安全に重大な影響が生じ、又は生ずるおそれがある事態
二 治安緊急事態 テロリスト等による大規模な攻撃その他我が国又は地方自治体の存立又は自由で民主的な基本秩序に対する差し迫った危険が生じ、又は生ずるおそれがある事態
三 災害緊急事態 大規模な自然災害等により国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある事態
※ 防衛緊急事態(いわゆる我が国有事=武力攻撃事態)以外の場合も含めて、非常事態を3つの類型に分けて、それぞれの定義を設けることとした。ドイツの基本法(憲法)などの規定を参考にしたものである。

2 国家緊急事態における措置
@ 国民保護の原則
  国家緊急事態において、執られる措置は、すべて国民の生命、身体及び財産の保護を旨として講ぜられるものでなければならないものとすること。
A 家緊急事態における基本的な権利・自由の制限に関する措置
・ 国家緊急事態の布告が発せられた場合には、この憲法及びこの憲法の規定に基づく法律の定めるところにより、第三章に定める基本的な権利・自由は、その布告が発せられている期間、特にこれを制限することができるものとすること。
   [制限される権利とその条件・・・略]

・ 国家緊急事態においても、この憲法の定めるところにより、基本的な権利・自由は保障されなければならず、前項の規定によりこれを制限することが余儀なくされるに至った場合にあっても、その制限に係る措置は必要最小限のものでなければならないものであること。
※ @において国家緊急事態における国民保護の大原則を定めるとともに、Aでは、例外的に基本的な権利・自由が制限されることがあり得ることを定めたものである。
B 内閣総理大臣の職務代行に関する特例措置
・ 国家緊急事態において内閣総理大臣が欠けた場合は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間、あらかじめ内閣総理大臣が指名する国務大臣が、一切の職務を行うことができるものとすること。

C 国会及び国会議員に関する特例措置
・ 国家緊急事態において、国会の措置を待つ暇がないときは、内閣総理大臣は、必要な措置を講ずるため、法律で定めるべき事項に関し政令を制定することができるものとすること。ただし、その措置については、国会の事後の承認を得なければならないものとすること。
・ 上記に規定する場合のほか、国家緊急事態において、国会を開会することが困難な場合には、国会の権能は、両院合同緊急委員会が行使するものとし、両院合同緊急委員会の組織については、法律で定めるものとすること。
・ 国家緊急事態の間に国会議員の任期が満了するときは、その任期は非常事態の終了まで延長されることとし、また、国家緊急事態においては、衆議院は解散されないものとすること。
※ BCは、行政・立法の各機関が機能不全に陥った場合の規定である。いずれも、昨年7月の「安全保障についての要綱案」でも、同様の規定が設けられている。

3 国家緊急事態における民主的統制
@ 法定主義の原則
この憲法に定めるもののほか、国家緊急事態に対処するために内閣総理大臣が講ずる措置は、法律の定めるところに基づかなければならないこと。
A国家緊急事態の認定及び措置に関する国会の関与
・ 国家緊急事態の認定及びこれに対処するために講ぜられる措置の概要については、原則として、国会の事前の承認を得なければならないものとすること。
・ 前項の規定による国会の事前の承認を得ることができないときは、事後に国会の承認を得なければならないものとすること。この場合において、事後の承認が得られないときは、当該承認を得ようとした国家緊急事態に係る措置は中止されなければならないものとすること。
・ 国会が国家緊急事態の終了を議決したときも、当該国家緊急事態に係る措置は終了されなければならないものとすること。
※ 国家緊急事態の認定及び終了に関して、国会の関与を定めるもので、必要最小限かつ究極のシビリアン・コントロールを機能させるための規定である。


第二節 自衛軍

1 自衛軍の設置と武力行使の謙抑制
・ 我が国は、国家の独立及び国民の安全を守るため、内閣総理大臣の最高の指揮監督権の下に、個別的又は集団的自衛権を行使するための必要最小限度の戦力を保持する組織として、法律の定めるところにより、自衛軍を設置するものとすること。
・ 自衛軍による武力の行使は、それが究極かつ最終の手段であり、必要かつ最小限の範囲内で行わなければならないことを深く自覚しなければならないものであって、法律の定めるところによらなければならないものとすること。
※ 第一段落では、自衛軍(名称については、更に検討が必要か。)を憲法上の機関として認知するとともに、@それが内閣総理大臣の指揮下にあること、A自衛軍の有する実力は「戦力」であること、を定めている。また、第二段落では、自衛軍による武力行使の謙抑制を定めている。これは、第4章第一節「平和主義」と同趣旨の規定であり、その趣旨は、いわゆる「制限された(集団的)自衛権」のみを容認する。という立場に立つものである。

2 自衛軍の任務
・ 自衛軍は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、防衛緊急事態に対し我が国を防衛することを目的とすること。
・ 自衛軍は、上記の任務のほか、法律の定めるところにより、治安緊急事態、災害緊急事態その他の公共の秩序の維持に当たること及び国際貢献のための活動(武力の行使を伴う活動を含む。)を行うことをも任務とすること。
※ 自衛軍の任務は、@防衛緊急事態における国家防衛を任務とすることは当然であるが、同時に、A治安緊急事態や災害緊急事態においても出動できること、Bさらには、武力の行使を含む国際貢献の活動をも任務として行うことができること、を明記している。

3 軍事規律維持のための組織等
・ 自衛軍の軍事規律を維持するため、法律の定めるところにより、特別の組織の設置その他の必要な措置を講ずることができるものとすること。
・ 前項の措置については、最終的に、司法裁判所及び憲法裁判所の審査に服することが保障されるものとすること。
※ 上記のように、自衛軍を「戦力」を有する実力組織=軍隊として認めることに伴って、その軍事規律の維持のために、その違反行為に対しては、一般の裁判所とは異なる特別裁判所の管轄に服させるのことが適切であるとも考えられる。ただし、他の特別裁判所と同様に(第5章第4節の2)、最高裁判所への上訴(及び憲法裁判所の判断)を保障している。


第九章   改 正

1 憲法改正案の原案の提案権
憲法改正案の原案の提案権は、国会議員のみがこれを有するものとすること。
※ 憲法改正案の原案の提案権は、法律案の場合と同様に(第5章第一節の4)、国会議員のみが有することとした。したがって、内閣がこれを提案しようというときは、衆議院議員たる内閣総理大臣の名前で提案することとなろう。

2 憲法改正の要件
@ 憲法改正の手続
・ この憲法の改正は、次のいずれかの方法によることを要するものとすること。
一 各議院の総議員の過半数の賛成で国会が憲法改正案を可決し、法律で定めるところにより、これを国民投票に付し、その有効投票数の過半数による承認を経ること。
二 各議院の3分の2以上の賛成で、憲法改正案を可決すること。

A 改正手続の特則
・ 第一章から第四章まで及びこの章の規定(「総則」、「象徴天皇制」、「基本的な権利・自由及び責務」及び「平和主義・国際協調」並びに「改正」)の改正は、@の第一号の方法によらなければならないものとすること。
※ あらゆる場合に両議院の3分の2以上の賛成と国民投票での過半数の賛成を要求する現行憲法の改正手続を緩和し、国民投票を要しない場合も規定することとした。ただし、我が国の「国柄」ともいえる「象徴天皇制」とか基本的人権、平和主義に関する規定等については、事柄の重大性にかんがみて、国民投票を義務づけている。

3 憲法改正の公布
・ 憲法の改正について、2の@の第一号の承認を経たとき又は同第二号の可決があったときは、天皇は、国民の名で、直ちにこれを公布するものとすること。


ご意見や情報はこちらへ
tomoni@eagle.ocn.ne.jp


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