正法寺に入山するには、二つの橋のどちらかを通らなければ
なりません。一つは「円通橋(えうづうばし)」、もう一つは「月泉橋
(げっせんばし)」と言います。その昔には月泉橋はなく、必ず円通
橋を渡り惣門より正法寺に入山致しました。
この橋の脇に「下乗」と書いた立て札があります。どなた様もこの
橋の前で乗り物から降りてお上り下さいとの意味です。
また仏様の前では、身分に関係なく、殿様でもお侍様でも、平民でも
みな等しく自らの足でお寺にお参りなさいとの教えでもありました。
この教えに反した一人のお殿様がおりました。「余は殿様じゃ。
馬から下りん!」と言って、勢いよく惣門の石段を駆け上がりました。
が、惣門の石段があまりに急で、馬も途中で力尽きてしまいました。
殿様は馬に「上れ!上れ!」と叱咤するも、馬は蹄(ひづめ)を掻く
ばかりでした。とうとう殿様も馬を下り、みなと同じよう自らの足で
お寺に入山したというお話です。
その時の馬の蹄(ひづめ)の跡が、現在も惣門の石段に刻まれている
ということです。
正法寺の惣門の石段がなぜに急に出来ているのかが、よくわかる
エピソードですね。正法寺にお越しの際は、惣門の石段を上りながら
馬の蹄(ひづめ)跡を探してみるのもよいでしょう。
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