2003/12/27
軌道計算ソフトウェア:YohOrb (Yoshida Observatory Hi-precision Orbit)
[目 次]
- はじめに
- YohOrbが使用するリソース
- 軌道計算の手順
- 観測および残差の表示について
- 計算のアルゴリズム
- 軌道要素のフォーマット
- 太陽座標および摂動体の座標
- 参考資料
1 はじめに
YohOrbは、彗星・小惑星の軌道計算を行うために「さつま吉田観測所」で開発した、Windows(95以上)上で動作するソフトウェアである。
概略の軌道要素と比較的長期間(数ヶ月〜数十年)の精密位置観測を入力し、軌道要素を観測にフィットするように改良する。
※彗星・小惑星の初期の観測(数日〜数週間)から、その軌道を計算することについては、「さつま吉田観測所」では「Project
PlutoによるDOS_Find」(参考資料viii)のソースプログラムをWindows用に改造して利用している。
2 YohOrbが使用するリソース
- 軌道要素ファイル - 彗星の非重力効果を考慮しない要素、彗星の非重力効果を考慮した要素、小惑星の要素、という3種類のフォーマットから選択する(フォーマットは後述)。
- 精密位置観測データ - MPCのフォーマットに準ずる(参考資料ix)。
- 観測所コード - MPCのフォーマットに準ずる(参考資料ix)。
- 太陽座標ファイル - RITフォーマット(後述)で格納。
- 摂動体の座標ファイル - RITフォーマット(後述)で格納。
- その他、途中計算結果を書込むための作業用ディスクスペースが必要となる。

3 軌道計算の手順
- 環境の設定 - メニューに従いリソースの登録を行う。その際、入力情報はWindowsのレジストリに登録することにより、次回のプログラム起動時に再入力の手間を省くことが出来る。
- 軌道要素の読込み - 目的とする天体の識別子(番号または仮符号)を指定することにより、軌道要素ファイルからの読込みを行う。なお、指定した天体がファイル中に見つからなければマニュアルで入力する。
- 計算方法の選択 - 彗星の場合、非重力効果を考慮するか否かを選択する。
- 観測データの読込み - 観測期間を指定して「観測データ」ファイルから作業用のディスクスペースに観測データを抽出する。更に@読込んだ軌道からの各観測の残差を計算し、A数値積分の誤差を判断するための目安(後述)を表示する。
- 積分間隔の指定 - 数値積分の間隔は省略値を「1日」としている。数値積分の誤差を確認しながら、状況に応じてこの数値を変更する。
- 棄却残差の設定 - (赤経、赤緯それぞれに対する)RMSエラーに対して何倍の残差を棄却するかを指定する。
- 改良計算 - 実行時の軌道要素と各観測の残差から観測にフィットするように軌道要素を改良する。そして、新しい軌道要素からの残差を表示する。
- 観測の棄却 - 残差の大きい観測に対して「棄却」を行う。通常は、「改良計算」と「観測の棄却」を残差が収束するまで繰返し実行することになる。
- 自動計算 - 「改良計算」と「観測の棄却」を自動で行う。
- ウェイトの設定 - 超高精度観測(後述)に対して指定された数値でウェイトを設定する。
- 位置推算誤差 - 軌道の元期における位置推算の推定誤差を計算する。
- 観測所ごとの統計情報 - 観測所ごとに残差を表示し、その平均値を求める。結果は、カレントフォルダにファイル名「天体の識別子」、拡張子「sta」として保存される。
- 元期の変更 - 軌道要素の元期を指定された時刻に変更する。
- 新しい軌道要素の保存 - 計算結果としての改良された軌道要素をフォーマットを指定して保存する。
- 計算結果の記録 - 画面上の3つの表示領域の内容をテキストファイルに保存する。結果は、カレントフォルダにファイル名「天体の識別子」、拡張子「log」として保存される。
※小惑星の場合、「全自動」がチェックされているか、観測データの読込み時に「自動計算する」が指定されると、「改良計算」から「計算結果の記録」までを自動で行う。
4 観測および残差の表示について
- 観測数が少ない場合には(300件が基準)、表示形式をロング形式(時刻、観測所、位置、残差)またはショート形式(位置情報を省略して1行あたり3列で表示)から選択できる。
- 観測数が多い場合には、無条件にショート形式のみの表示となる(システムの制約による)。
- それぞれの観測をマウスでクリックすると、その観測者(観測所コード)の情報をステータスバーに表示する。
- また、ダブルクリックすることにより、その観測を棄却したり、棄却を取消したりすることが出来る。
5 計算のアルゴリズム
- 軌道改良法については、各要素に微小量を加えながら改良して行く方法を採用している(参考資料ii)。
- 彗星の非重力効果については、「StyleU」による(参考資料i、iii)。
- 数値積分法は、彗星の非重力効果を考慮する場合を除いて、Shubart-Stumpffの外挿法による(参考資料v)。この場合、積分誤差の目安として、積分計算の終了後、開始時刻まで逆計算することにより、出発時の初期値と逆算時のそれを比較した数値を表示する。
- 彗星の非重力効果を考慮する積分には、Runge-Kutta法とAdams-Bashforth-Moulton法を組み合せて使用する(参考資料vi)。この方法では、誤差を推定しながら積分を進めて行くので計算終了時の推定誤差を表示する。
- 観測にウェイトをつけることについては、超高精度観測(時刻が日の小数6桁まで、赤経は時間の秒で小数3桁まで、赤緯は角度の秒で小数2桁まで記録してあるもの)に対してのみ行っている。(※ウェイトを落とすことについては、現在は未対応)
6 軌道要素のフォーマット
- YohOrbでは軌道要素を格納するファイル名を固定(格納フォルダは「環境設定」で指定)することによりフォーマットを識別する。
- 識別子(パック形式)のみ先頭10バイトに左詰めで格納するが、2番目以降の項目は空白で区切りさえすれば桁位置は自由で良い。但し、すべての項目が指定されている必要がある。
- Comet.elm - 彗星用の簡易的なフォーマットで、次の項目から構成される
id, T, q, e, ω, Ω, i, m1, m2
(例)
0100P 2003 08 18.00967 1.9797089 0.4191470 181.52962 37.89227 25.66357 9.0 8.0
- YohOrb.elm - 彗星用の摂動と非重力効果を考慮したフォーマット
id, epoch, T, q, e, ω, Ω, i, m1, m2, A1, A2
(例)
0100P 2003 08 09.0 2452869.50967 1.9797089 0.4191470 181.52962 37.89227 25.66357 9.0 8.0 +0.28 -0.0010
- Astorb.elm - 小惑星用のフォーマットで、次の項目から構成される
id, name, Epoch, M0, a, e, ω, Ω, i, H, G, diam, obs, arc, p1, p2
(例)
01315 Bronislawa 2003 10 27 156.4925044 3.204020574 0.080661373 26.5153634 236.6868571 7.0681441 9.8 0.15 63.5 341 25548 0.039 59.4
- Soft00Cmt.txt - 読込み専用の彗星用フォーマット、MPCのWebページからダウンロードできる(参考資料ix)。
- astorb.dat - 読込み専用の小惑星用フォーマット、Lowell天文台のページからダウンロードできる(参考資料x)。
7 太陽座標および摂動体の座標
- 摂動体として水星〜冥王星の大惑星、月、およびセレス、パラス、ベスタの3つの小惑星の座標をファイルにした。
- 太陽および惑星(含む月)の座標は、DE405のものを使用した(参考資料vii)。
- 小惑星の座標については、参考資料ivの質量を使用して本プログラムで初期値を計算し、DE405の惑星と月を摂動体として数値積分して求めた。
- 太陽、摂動体ともRITフォーマットで保存している。これは、アクセス効率を最優先した独自のフォーマットである(RIT
- Reduced Integration Table)。概要は、開始時刻(JD)、終了時刻(JD)、レコード間隔(日)、格納天体数;天体ごとの名称と質量;そして各日付に対する赤道直角座標からなっている。
- 更に、摂動体のファイルについては「時刻の昇順」、「時刻の降順」という2つの「同じ期間に対するレコードの並びが逆の」ファイルを用意する。
8 参考資料
- 「天体軌道論」,長谷川 一郎, 恒星社
- 「天体の軌道計算」,中野 主一,誠文堂新光社
- 「彗星」,中村士・山本哲生,恒星社厚生閣
- 「天体位置表1994」,海上保安庁
- 「Schubart,J.Stumpff, P.1966, On an n-body
program of high accuracy for the computation
of ephemerides of minor planets and comets,
Veroff. Astron. Rechen-Instituts, Heidelberg,
Nr. 18.」
- 「DE118i」, ASTROWARE 1 (CD-ROM), Network
cybernetics corporation
- 「JPL Planetary and Lunar Ephemerides」,
E.M.Standish, X.X.Newhall, J.G.Williams,
and W.M.Folkner, Willmann-Bell, Inc.
- 「http://www.projectpluto.com」, Project
Pluto のホームページ
- 「http://cfa-www.harvard.edu/cfa/ps/mpc.html」, MPCのホームページ
- 「ftp://ftp.lowell.edu/pub/elgb/astorb.html」, Lowell天文台のBowell氏による小惑星の軌道データベース
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