「食と農」発想の転換を
諸木 逸郎
金をかけず、手を抜いて、じっくり育て、付加価値をつけ、高く売る。今までの集約的農業
とは正反対の農法に挑戦している。去勢鶏(ケーポン飼育)による有機畜産の試みだ。
地域の未利用資源を使った環境に優しい持続的な有機畜産である。
日本では採卵鶏オス雛は鑑別後、ほとんど棄却される。農林統計によると、国内で
1億8千万羽、本県でも1,200万羽に上る。加世田常潤高校は、2年がかりで国内初の
鶏去勢手術を確立した。餌は屑(くず)芋、豆腐粕、屑米、屑雑魚混合のサイレージを与える。
ふ卵業者や地元酒造会社、精米業者、水産業者の協力により、雛代や飼料材料費は
ほとんどかかっていない。
現在、8ヵ月の卵用種、5ヵ月の卵肉兼用種(横班プリマスロック)の去勢オスを飼育している。
飼育期間を区切り、食鶏関係者の協力を得て試食している。畜肉のうまみが、性成熟とともに
増すことを証明しつつある。雄独特の臭みや硬さもほとんどない。これから、いかに地元の産業と
して活性化させるかが課題となる。
水稲休耕手当、WHO(世界保健機関)などの米政策を考えると、稲作は厳しい。
休耕田も加速して増えることが予想される。荒れる田や畑をみる度に胸が締め付けられる、
増える休耕地を飼料米、飼料用甘藷などの生産に生かす好機ととらえている。
飼料米は直播きロールこん包収穫し、そのままケーポンに給与する。甘藷は他の豆腐粕などと
混ぜ、缶(18リットル)にサイレージとし、毎日の給与の手間を省いている。
常潤高校では廃材等利用のモデル鶏舎を建て、ケーポンを放し飼いにしている。自営を
目指しているK君と高齢者に庭先養鶏として委託し、高齢者福祉とも結びつけた経営も夢見る。
間もなく団塊の世代が退職し、帰農する時代も来る。年金である程度、生活が保障されている
元気な高齢者を加え、おいしい去勢鶏生産により本県農業に元気をつけたい。
これからの食は「安心・安全でおいしい」がキーワードと考えている。知覧町の前田浩一さんは
脱サラの農業者だ。まさしく安心・安全でおいしいイチゴづくりでご活躍されている。最近、
障害者や県内外の小中学生も呼び込んだ営農が始まっている。農と食と福祉と教育が融合した
経営の実践である。発想の転換が新たな時代を拓く。
2003.4.29 南日本新聞−一筆啓上−