今また「農は国の本」
                              諸木 逸郎

 昔から「農は国の本(もと)」といわれ、農業は政治経済の基本として重視されてきた。
1961年の農業基本法は、農業の近代化と所得向上を目指す農家のための法律といえる。
同法の下、農業の近代化や専業化、規模拡大が進んだ。一方、安い農産物の輸入で
市場は混乱し、農薬や化学肥料の多投与による集約的な農法が土壌汚染などの
環境問題を引き起こした。過疎化が急速に進んだ農村は荒廃。食の亡失やファーストフード
進出などで伝統的食文化は消えつつある。

しかし、99年7月の新農基法(食料・農業・農村基本法)は、農業振興のみならず
国民生活の安定向上および経済の健全な発展を基本理念とした。これまでの農業者の
基本法から国民生活に基軸を移した点で画期的といえる。良質な食料の合理的な価格での
安定供給や、国土の保全、水資源の涵養、景観保持などが盛り込まれている。

 加世田常潤高校では、4月に「有機生産科」がスタートする。有機に関する全国初の
学科として期待される。同科では環境保全型農業の知識や技術を学ぶ。安心・安全な
農作物を安定供給する農業経営者の育成が目標となる。今、有機肥料や減農薬のお茶・
かんきつ・イチジク・緑竹の生産や、霊芝を使った加工食品生産を行っており、国内初開発の
去勢鶏(ケーポン)の有機畜産も軌道に乗りつつある。

日本の食糧自給率は、カロリーベースで先進国最低の40%。世界の人口爆発や水問題などを
考えると食料の安全保障に危機を感じる。自給率を上げ、国内農業の活性化へ生産者や
消費者が日本の食を見直すべきだ。

 本校は2年前から黒豚焼き肉大会を開いている。豚肉や野菜、焼き肉のたれに至るまで生徒が
飼育栽培、加工生産したものだ。勤労の大切さを知り、命ある食材に感謝する「食育」として
位置づけている。黒豚のうまさに驚嘆する生徒も多い。

 前年度、肥育牛が最高級「A5の9」に格付けされた。上肉生産の課題研究3年目の成果だ。
担当のO君は自営を目指し県立農大へ進学。K君は直接自営に挑む。県外就職の生徒は、
消費者として本県食材を求めるサポーターとなるであろう。

 県内各校が取り組む食育教育や地産地消の学校給食は、子供たちの心をしっかりとらえて
いるようだ。21世紀を担う子供たちのために、農業・農村の持つ多面的機能を持続したい。
今また「農は国の本」なり。

                         2003.3.25 南日本新聞−一筆啓上−