その手口は、新たな詐欺商法の類型といってよいものです。バブル崩壊期に、これらの事業者は相次いで倒産し、被害が顕在化しました。4事件の被害者数は、7400名に及ぶといわれます。
1994年6月に不動産特定共同事業法が制定されましたが、同法は、これら不動産共同投資事件の深刻な被害に鑑み、被害の再発を防止するために必要な法的規制を行うこと等を目的としています。
単なる不動産の区分所有権や共有持分権の販売ではなく、投資金額に対する利回り保証による金銭支払いを伴った金融商品の販売という側面をもっていました。しかも、事業者は、販売利益を大きくするために、無理な賃料保証をして高値で小口不動産を販売しました。
そのため、販売対象の不動産は、もともと販売価格や約定賃料に見合う資産価値や収益力はありませんでした。最初から、商品としては欠陥があったのです。
事業者は、対象不動産の収益だけでは、約定の賃料を支払うことができず、さらに新たな不動産を賃料保証したうえで小口販売して、賃料の支払いに当てるという自転車操業的経営を繰り返していました。事業そのものが、「ネズミ講」的な構造を持っており、いずれ破綻することは必然でした。事業者の事業が破綻したときは、商品の欠陥が一気に顕在化することも、最初から予想されることでした。
このように事業や商品そのものが不法、不当であり、一般公衆に販売すること自体が詐欺行為に該当するというべきです。詐欺の本質が商品構造そのものにあるという点で、私たちは、「構造的詐欺」と、名づけています。
他の不動産共同投資事件でも、金融機関が事業者とローン提携し、販売価格の大半を融資するシステムになっていました。このような提携ローンが存在することにより、少額の自己資金しか持たない者も投資に参加させることができ、大量販売が可能になります。まさに提携ローンの存在が、被害の発生と拡大を生んでいるのです。
不動産共同投資事件において、事業者にローン提携した金融機関は単に「抗弁の対抗」を受けるにとどまらず、不法行為責任を負うものと考えられますが、それは以下の事情によります。
@ {事業の詐欺性} 事業者の事業が構造的」に詐欺であり、販売する商品そのものが、不法・不当であるということ。
A {事業の共同} 事業者が販売、金融機関が融資という形で事業協力して小口不動産を大量に販売しかつ融資することを共通の目的にしていること。
B {故意・重過失} ローン提携に際して、金融機関は、事業者の販売する物(たとえば特定のホテル)について、資産価値・収益力・事業計画を審査しており、欠陥商品であることを知り、または知りうべき立場にあること。
とくにBに関しては、ローン提携した金融機関は、事業者の行為全般を監督することまでがもとめられているのではなく、事業者の個別案件について審査をすれば足りるのであり、しかも十分な審査をする機会を保証されているのですから、被害の発生について、重大な責任を負っているというべきです。不動産共同投資事件においては、商品の欠陥が証明されれば、提携金融機関の故意・重過失は、原則として推定されるといってよいのです。
こうした考えのもと、1994年6月、マルコーの小口海外不動産の購入者約600名が、マルコーの海外不動産事業を資金的に支えてきた三菱信託銀行・日本長期信用銀行・三菱商事・日商岩井などを被告とする損害賠償請求訴訟を提起しました。なお、追加提訴により、現在、原告は920名なっています。 (中略)
日本法のもとでの法的根拠としては、民法719条(共同行為責任)がありますが、これをマルコーの海外不動産事業に当てはめた場合、次の諸事実が、銀行の責任を裏付ける根拠となります
Aマルコーは倒産1年以上前の中間決算期より粉飾決算をしており、業績悪化のなかで欠陥商品を販売したこと。したがって当初から事業および商品が破綻する蓋然性が極めて高かったこと
A特定海外不動産プロジェクトに対する融資、ゼネラルリースに対する購入者向け融資金原資の融資により、欠陥商品販売に協力し、一般公衆に危険を広めたこと。
A再建計画を立案し、違法な事業を継続させてきたこと(三菱信託銀行)
A再建計画を立案したこと等からも明らかなとおり、事業の破綻について早期に予見していたこと
弁護士 森賀 幹夫様の論文を掲載しました
和解はゼネラルリースに対する損害賠償請求訴訟において、成立しましたが、その骨子は次のとおり
です。
@ゼネラルリースは海外不動産の取得資金を融資した原告890名に対し、残債務金額(1505億円)を
放棄する。
Aゼネラルリースは提携融資をしなかった原告150名を含む全原告に対し、解決金として総額7億5000
万円を支払う。
B原告らは、三菱信託銀行等に対する訴訟をとり下げる。
本和解によって、ゼネラルリースから融資を受けていた購入者は、残債務が全額放棄されることにより、
被害の大半が回復されることになりました。同時に本和解は販売業者が倒産した場合に、抜本的な
救済手続きがないとされてきた提携融資を利用しなかった購入者に、被害回復の道を開いたという点で
画期的です。また本和解は、ゼネラルリースの譲歩の形式をとっているものの、経済的な負担は、
マルコー及びゼネラルリースの融資元ないし、事業協力者が負担することによって成立したものです。
その点で、原告が融資責任を追及した目的は、結果的に達成されました。
マルコー事件の解決が、消費者と投資家の被害に対する金融機関の責任のあり方についての、一つの
指針となることを期待しています。
森賀 幹夫様(東京弁護士会)
清水 鳩子様 (主婦連合会副会長) の論文より掲載