消費者法ニュースよりの抜粋   

1 不動産共同投資事件とは

1980年代後半以降、マルコー、ライベックス、高野俊雄商店、五輪建設などの事業者が、ホテルやショッピングなどを小口化し、販売と同時に一括して借りあげる約定のもと、その小口の共用持分権ないし区分所有権に分割して、大量に販売しました。これらの事業者は、販売に際して、価値や収益力のない不動産を優良な不動産であるかのごとく偽り、物件の能力をはるかに超える収益の支払いを保証して、資産価値の低い小口不動産に多額の出資をさせていました。     

その手口は、新たな詐欺商法の類型といってよいものです。バブル崩壊期に、これらの事業者は相次いで倒産し、被害が顕在化しました。4事件の被害者数は、7400名に及ぶといわれます。
1994年6月に不動産特定共同事業法が制定されましたが、同法は、これら不動産共同投資事件の深刻な被害に鑑み、被害の再発を防止するために必要な法的規制を行うこと等を目的としています。

2 事業そのものの詐欺性、構造的詐欺

不動産共同投資事件のひとつの特徴は、事業そのものが詐欺商法であるということです。

単なる不動産の区分所有権や共有持分権の販売ではなく、投資金額に対する利回り保証による金銭支払いを伴った金融商品の販売という側面をもっていました。しかも、事業者は、販売利益を大きくするために、無理な賃料保証をして高値で小口不動産を販売しました。

そのため、販売対象の不動産は、もともと販売価格や約定賃料に見合う資産価値や収益力はありませんでした。最初から、商品としては欠陥があったのです。

事業者は、対象不動産の収益だけでは、約定の賃料を支払うことができず、さらに新たな不動産を賃料保証したうえで小口販売して、賃料の支払いに当てるという自転車操業的経営を繰り返していました。事業そのものが、「ネズミ講」的な構造を持っており、いずれ破綻することは必然でした。事業者の事業が破綻したときは、商品の欠陥が一気に顕在化することも、最初から予想されることでした。

このように事業や商品そのものが不法、不当であり、一般公衆に販売すること自体が詐欺行為に該当するというべきです。詐欺の本質が商品構造そのものにあるという点で、私たちは、「構造的詐欺」と、名づけています。

3 提携金融機関の責任

不動産共同投資事件のもうひとつの特徴は、小口不動産の取得資金の大半を融資する 提携ローンが存在することです。マルコーの100%子会社であるゼネラルリースが販売対象物件を担保に購入資金の95%まで融資を行うシステムになっていて、共有持分権等の購入者の8割近くは、同社より融資をうけていました。

他の不動産共同投資事件でも、金融機関が事業者とローン提携し、販売価格の大半を融資するシステムになっていました。このような提携ローンが存在することにより、少額の自己資金しか持たない者も投資に参加させることができ、大量販売が可能になります。まさに提携ローンの存在が、被害の発生と拡大を生んでいるのです。

不動産共同投資事件において、事業者にローン提携した金融機関は単に「抗弁の対抗」を受けるにとどまらず、不法行為責任を負うものと考えられますが、それは以下の事情によります。

@ {事業の詐欺性} 事業者の事業が構造的」に詐欺であり、販売する商品そのものが、不法・不当であるということ。

A {事業の共同} 事業者が販売、金融機関が融資という形で事業協力して小口不動産を大量に販売しかつ融資することを共通の目的にしていること。

B {故意・重過失} ローン提携に際して、金融機関は、事業者の販売する物(たとえば特定のホテル)について、資産価値・収益力・事業計画を審査しており、欠陥商品であることを知り、または知りうべき立場にあること。

とくにBに関しては、ローン提携した金融機関は、事業者の行為全般を監督することまでがもとめられているのではなく、事業者の個別案件について審査をすれば足りるのであり、しかも十分な審査をする機会を保証されているのですから、被害の発生について、重大な責任を負っているというべきです。不動産共同投資事件においては、商品の欠陥が証明されれば、提携金融機関の故意・重過失は、原則として推定されるといってよいのです。

4 マルコー訴訟における銀行の責任

 マルコーの海外不動産事業は、詐欺商法そのものであり、詐欺商法に加担して共同して事業を推進した金融機関や商社は、共同不法行為責任を負うべきである。

こうした考えのもと、1994年6月、マルコーの小口海外不動産の購入者約600名が、マルコーの海外不動産事業を資金的に支えてきた三菱信託銀行・日本長期信用銀行・三菱商事・日商岩井などを被告とする損害賠償請求訴訟を提起しました。なお、追加提訴により、現在、原告は920名なっています。  (中略)

日本法のもとでの法的根拠としては、民法719条(共同行為責任)がありますが、これをマルコーの海外不動産事業に当てはめた場合、次の諸事実が、銀行の責任を裏付ける根拠となります

 マルコー事業の違法性
@マルコーの事業および商品そのものが構造的に詐欺であること。

Aマルコーは倒産1年以上前の中間決算期より粉飾決算をしており、業績悪化のなかで欠陥商品を販売したこと。したがって当初から事業および商品が破綻する蓋然性が極めて高かったこと

 違法な事業に対する資金的支援
@銀行はメインバンクないし準メインバンクとして、マルコーの違法な事業を資金的に支えてきたということ。

A特定海外不動産プロジェクトに対する融資、ゼネラルリースに対する購入者向け融資金原資の融資により、欠陥商品販売に協力し、一般公衆に危険を広めたこと。

 事業にたいするコントロール
@資金面での支配に加え、社員の派遣や資金会議(三菱信託銀行)を通じて、人的にもコントロールしてきたこと。

A再建計画を立案し、違法な事業を継続させてきたこと(三菱信託銀行)

 被害発生についての予見可能性
@特定海外不動産プロジェクトに対する融資に際しての販売計画、事業計画の審査を通じて商品の欠陥を予見していたこと。

A再建計画を立案したこと等からも明らかなとおり、事業の破綻について早期に予見していたこと

                弁護士  森賀  幹夫様の論文を掲載しました         

 

  

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1,000名の原告が勝利和解 マルコー海外不動産訴訟(東京)

本年4月、マルコー不動産詐欺被害賠償請求訴訟において、原告1,047名は勝利和解を達成しました。
本例はデベロッパーの無責任な海外の不動産投資に金融機関が提携融資を行い被害を発生・拡大
させた事例です。原告らはこれまで
@マルコーの金融子会社で提携融資を行ったゼネラルリースに対する損害賠償請求訴訟と
A三菱信託銀行・日本長期信用銀行・三菱商事・日商岩井に対する融資者責任(レンダー・ライア
ビリティ)等に基づく損害賠償請求訴訟を提起して、被害の回復を求めていました。

和解はゼネラルリースに対する損害賠償請求訴訟において、成立しましたが、その骨子は次のとおり
です。
@ゼネラルリースは海外不動産の取得資金を融資した原告890名に対し、残債務金額(1505億円)を
放棄する。
Aゼネラルリースは提携融資をしなかった原告150名を含む全原告に対し、解決金として総額7億5000
万円を支払う。
B原告らは、三菱信託銀行等に対する訴訟をとり下げる。

本和解によって、ゼネラルリースから融資を受けていた購入者は、残債務が全額放棄されることにより、
被害の大半が回復されることになりました。同時に本和解は販売業者が倒産した場合に、抜本的な
救済手続きがないとされてきた提携融資を利用しなかった購入者に、被害回復の道を開いたという点で
画期的です。また本和解は、ゼネラルリースの譲歩の形式をとっているものの、経済的な負担は、
マルコー及びゼネラルリースの融資元ないし、事業協力者が負担することによって成立したものです。
その点で、原告が融資責任を追及した目的は、結果的に達成されました。
マルコー事件の解決が、消費者と投資家の被害に対する金融機関の責任のあり方についての、一つの
指針となることを期待しています。
                                     森賀 幹夫様(東京弁護士会)

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弊害多い「敗訴者負担制度」

内閣総理大臣を本部長とする「司法制度改革推進本部」は現在10の検討会で司法制度の見直しを
進めています。
その1つのテーマである弁護士報酬の敗訴者負担制度とは、敗訴した側に相手方の弁護士費用を支払
わせるというものです。この制度の扱いについては、「司法アクセス検討会」で今秋から本格的な議論が
行われます。
勝訴者側から見れば合理的なようにも見えるこの制度は、実は多くの弊害を招く恐れが強い不合理な
制度です。
主婦連では70年代に、果汁の入っていない飲み物に無果汁と表示しなくてもよいとの公正競争規約を
公正取引委員会が認可したため、景品表示法違反で提訴しましたが、「消費者に不服申立権」はない」
との理由で敗訴しました。
またオイルショックの時に石油元売業者がヤミカルテルを結び灯油の値段をつり上げたとして、損害賠償
請求訴訟を提起しました。しかし、この裁判も損害の証明がないとの理由で敗訴しました。
私たちに業者のカルテルの詳細を立証させるのは無理というものです。結局、裁判では勝訴できませんで
したが、不当表示や談合について社会の見方を変えることはできたと思います。
当時、私たちの弁護士は手弁当で担当してくれましたが、敗訴すれば相手の弁護士の報酬も負担しなけ
ればならない制度があったとすれば、その負担が重荷になって訴えを起こすことはできなかったかもしれません。
裁判の結果はやってみなければ分からない面があると弁護士は言います。私たちの場合もそうでした。
特に医療事故や欠陥商品事故などでは、被害者側は提訴以前に証拠として使える情報を入手すること
はほとんどできませんし、多くの消費者被害では救済の法律が不十分です。
そうした状況なのに、負ければ相手側弁護士の費用も払わなければならないというのでは、一般の市民
にとって裁判を起こすことは大きなリスクなります。裁判に踏み切れず泣き寝入りするか、不本意な解決を
迫られることになるでしょう。
結局、この制度は、敗訴しても相手側弁護士の報酬を負担できるほど大きな資金力をもつ企業や行政
に有利な制度で、裁判を市民から遠ざけるものです。
敗訴も覚悟で裁判をするという人が減れば、社会の様々な弊害を改善するチャンスが失われることにも
なります。特に、私たちが提起したような、行政や立法のあり方を問う政策形成訴訟と呼ばれる訴訟を
起こしにくくなれば、不明朗な行政を是正しにくくなるでしょう。
司法制度改革審議会が一昨年に出した中間報告は、このような敗訴者負担制度を「基本的に導入
する」としていました。
それに反対する声が高まった結果、昨年6月の最終意見書では原則導入とせず、「訴訟を起こすことを
萎縮させる場合には導入しない」との趣旨も明記されました。しかし他方で、これまで弁護士報酬を相手
側から回収できないため裁判をあきらめてきた人ののために導入するとしていますが、そんなケースは
ほとんど考えられません。
検討会の審議も透明性に欠けています。推進本部の検討会は一般公開されていません。半数の検討会
は委員名入りで議事録を公開していますが、最も国民に身近な問題を扱う司法アクセス検討会の議事録
は発言者の名が伏せられています。座長発言以外は委員の誰がどう発言したのか分からないのです。
「弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入は、私たち一般市民が裁判を起こすことを、今以上に困難に
します。裁判を受ける権利の障害となるこの制度の導入を認めることはできません。司法の救済を求める
私たちを裁判所から閉め出すようなことはしないでください」
今、私たちは、そう訴えています。

     清水 鳩子様 (主婦連合会副会長) の論文より掲載 

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