むかし絵について

 私がむかし絵に興味を持ったのは1952年、つまり33年前に朝日新聞にイラストを担当したことに始まります。著名な歴史学者の指導を受けて、爬虫類が歩き回った時代から。ざっと7、8万年前から日本列島に人間が登場(直良学説)し、やがて縄文、弥生のはなやかな古代文明の幕開きとなり、気の遠くなるような長い年月をへて平安、鎌倉、江戸時代へとたどります。
 私の描く「墨彩むかし絵」は、日本人には馴染みやすい絵画表現を使い、江戸から明治に視点を向け、主として庶民の生活に主眼をおいています。それは単なるノスタルジイだけではなく、武家支配による封建制度の中で、商業社会や人間のいきざまが、今日の社会生活にオーバラップする部分が多いことに興味を感じるからです。
各地の個展会場で「資料は?」という質問がたくさんあります。勿論、資料は綿蜜に調べ、1枚の作品に数10冊の資料が必要な場合が沢山あります。だからといって、それを写して描くわけではなく。私は私なりの絵画構成を主眼に、いまの人間としての解釈を加えて制作するわけです。また時には文献のみの場合もあります。洋画や日本画の題材が現実にある山や建物や人物のスケッチがもとになるのと、まったく同じ意味にとって頂ければ幸いです。
 絵は見る人に感銘を与え、何かを語りかければ生きている絵とは云えぬと私は信じております。

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