| 「登録文化財」 鳥居醤油店 |
| 「登録有形文化財」申請書類/建造物調査書 福井工業大学講師・工学博士 市川秀和
明治41年(1908)七尾大火で焼失した藩政期からの大森屋菓子店が再建される(現建物)。 この再建と同時に当建物と家財道具一式を、近くの小間物商・鳥居長助が 購入し大森屋に貸し与えた 明治44年(1911)頃、鳥居長助が大森屋を引き継ぎ「大森屋事 鳥居花鳥堂」を始める。 大正14年(1925)長助亡き後を継いだ鳥居定吉(初代)が、鹿島町の今井醤油醸造所から 道具類を譲り受けて、菓子業から醤油業へと転業する。 昭和41年(1966)2代目鳥居芳光が、現在のように外観や店内を改装する。 現在は創業79年を迎え、3代目当主が伝統的な醸造方法で醤油を造り続けるとともに、むかしながらの商い風景の面影を残した店構えを大切に護り続けている。 3.現在の保存状態 現在の鳥居醤油店は、昭和41年に外観や内部の全体を改装したものの、かっての風情ある雰囲気を充分に維持しており、良好な保存状態であって、明治の大火後の建築事情や時代性、建築当時の様子をほぼ正確に伝え残していると言えよう。 4.保存経緯(一本杉通りのまちづくりから) 鳥居醤油店における「登録有形文化財」の申請に当たっては、これまで10年以上にわたる一本杉町の独自なまちづくりを発端としている。七尾市内を東西に貫く歴史街道の中核に位置して、由諸ある老舗商家が最も数多く建ち並ぶ通りである一本杉町は、伝統文化に根ざした風情ある町並みを後世に伝え残すことに誇りと責任を持つとともに、新たな芸術文化や生活が息づく現代性も積極的に取り入れることを目的として、「アートとのれんの街」を全体に掲げ、「癒しともてなし」による様々なまちづくりの実践活動に努めてきた。その具体的な活動概要をまとめたものが、下表である。 このような一本杉町のまちづくりの経緯から今後の進展に向けて、町固有の貴重な老舗建造物や近代建築の保存活用と、歴史的町並みの景観向上かつ形成のために、これまで親しまれてきた土蔵造りの鳥居醤油店を「登録有形文化財」へ申請するに到ったのである。
5.建築史的考察 鳥居醤油店は、明治38年の七尾大火後に土蔵造りによる七尾町家の現存する数少ない一つであり、それは全国的な傾向でもあった(例:高岡市や川越市など)。また、この重厚な外観を持った土蔵造りの老舗商家は、藩政期からの風格ある伝統を受け継いおり、当地域固有の歴史的資産でもある。なお1階の店舗や2階の物置、外観は昭和41年に新しく改装されたものの、むかしながらの商い風景や落ち着いた内部の雰囲気を大切に護り残しているのは高く評価される。また伝統醤油が息づく貴重な歴史建造物でもある。 6.登録保存の目的と意義 鳥居醤油店における登録保存の目的と意義については、以上の保存経緯と建築史的考察を踏まえて、次の2点から指摘される。 @一本杉通りの歴史的町並みに寄与し、広く親しまれてきた建造物 この重厚な土蔵造りの老舗商家は、今では極めて珍しくなったことから広く親しまれており、今後の一本杉通りの風情ある歴史的町並みを形成していく上で重要である。 A明治の七尾大火後の土蔵造りと藩政期の伝統を受け継ぐ老舗商家 この土蔵造りの老舗は、今では再現も極めて容易ではなく、また藩政期の商家の伝統を受け継ぎ、明治末の大火後における当地域の生活文化や時代性を知る上で貴重である。 つづく |