「登録文化財」 北島屋茶店 |
「登録有形文化財」申請書類/建造物調査書
福井工業大学講師・工学博士
市川秀和
2.建設経緯と北島屋の歩み
1.建築データ
建築名称:北島屋茶店
所 在 地 :石川県七尾市一本杉町54番地
所 有 者 :北林昌之
建築構造:木構造(腕木構造・瓦葺き)
階 高 :2階建
延床面積:132u(1階:70u、2階61u)
建 造 年 :明治37年頃
明治37年(1904)頃、回船問屋「津嘉」の当主で県会議員の津田嘉一郎により、その本宅の前住宅の一つとして現在の建物が完成する。
大正元年(1912)には、加賀美川町出身の弁護士北林弥三次郎が当建物を購入し、事務所とし て開業する。
昭和8年(1933)北林弥三次郎の子息敏雄(初代)が「北島屋茶店」を創業する。
このとき、玄関や階段、1階マエノ間を改装する。
現在は創業70年を迎え、2代目当主が当時のままの店構えを大切に伝え残しながら、むかしながらの人情ある商いを守り続けている。
3.現在の保存状態
現在の北島屋茶店は、明治末の大火以前の伝統的な七尾町家の風情を伝えており、建物内部の雰囲気は当時のままで、2階の紅殻色格子も鮮やかに残っており、全体的に保存状態は良である。 なお昭和8年の茶店創業に、玄関や階段、1階マエノ間を改装した。
4.保存経緯(一本杉通りまちづくりから)
北島屋茶店における「登録有形文化財」の申請に当たっては、これまで10年以上にわたる一本杉通りの独自なまちづくりを発端としている。 七尾市内を東西に貫く歴史街道の中核に位置し、由緒ある老舗商家が最も数多く建ち並ぶ通りである一本杉町は、伝統文化に根ざした風情ある町並みを後世に伝え残すことに誇りと責任を持つとともに、新たな芸術文化や生活文化が息づく現代性も積極的に取り入れることを目的として、「アートとのれんの街」を全体イメージに掲げ、「癒しともてなし」による様々なまちづくりの実践活動に努めてきた、その具体的な活動概要をまとめたものが、下表である。
このような一本杉町づくりの経緯から今後の進展に向けて、町固有の貴重な老舗建造物や近代建築の保存活用と、歴史的町並みの景観向上かつ形成のために、これまで親しまれ続けてきた七尾町家の北島屋茶店「登録有形文化財」へ申請するに到った。
<アートとのれんの街 一本杉通り> まちづくりの歩み 平成5〜6年(’93〜’94)
<暖簾の街>のイメージ形成能登七尾で最も歴史のある通りにおいて、老舗の伝統文化を伝え守り、町並みの魅力を向上させることを目的として、商業活性化推進事業のテーマに「暖簾の街」を掲げて、独自なまちづくりに着手した。 平成7〜9年(’95〜’97)
<アートの街>の取り組み
連続企画「七尾国際石彫
シンポジュウム」「七尾国際石彫シンポジュウム」を3年連続にわたって企画開催した。町の通りをストリート会場として国内外の彫刻家による制作実践を通した「石彫のあるプロムナードづくり」を試みた、また「景観シンポジウム」「街角シンポジュウム」なども開催して、アートの息づく個性的なまちづくりについて討議した。 平成10年(’98)
<アートとのれんの街>形成
企画「七尾国際アーチストキャンプ」昨年までの「ななお国際石彫シンポジウム」を発展継承させるために、「七尾国際アーチストキャンプ」を新たに開催した。石彫だけでなく、絵画や陶芸、木工、染色、音楽などアート分野を広げて、住民参加によるアートの賑わい演出を町通りの商店街に展開した。また「街並みと環境芸術」をテーマに景観形成について討議した。 平成11年(’99)
<アートとのれんの街>形成
企画<七尾なみなみネット>港町七尾から「波」をキーワードに情報機器等を活用したイベント企画「七尾なみなみネット」を開催し、インターネットによる情報発信やデザインコンペなど多彩な事業内容から中心商店街の賑わい創出を図った。また「アートとのれんの街」充実向上に努めた。 平成12〜16年(’00〜’04)
<アートとのれんの街>形成
継続事業「街並み景観向上計画」昨年の「七尾なみなみネット」継続事業として街のホームページ充実を図った。さらに継続事業「街並み景観向上計画」として、景観デザインコンペや水銀灯改修、ファザード補助整備、石畳・石灯籠の設置構想など、具体的な取り組みを始めた。「’03一本杉公園」を新設した。16年度は、登録文化財の申請や景観ガイドライン作成、ファザードの統一化(暖簾・看板)など、新たに取り組む。
5.建築史的考察
北島屋茶店は、明治38年の七尾大火を逃れた数少ない稀少な建築物であり、伝統的な腕木構造を伝えの残す良好な七尾町家である。また玄関が、通り庭から入ってナカノ間に付けられているのも当地では珍しく、そして2階開口部の鮮やかな紅殻格子と障子窓も今では貴重である。さらに間取りについては、昭和8年に玄関の幅や階段の位置、そして1階マエノ間をミセノ間に改装しているものの、建築史的復元は比較的容易なので大きな問題は無い。七尾庶民の町家形式と住まい方、商業生活文化などを考察する上で重要である。
6.登録保存の目的と意義
北島屋茶店における登録保存の目的と意義については、以上の保存経緯と建築史的考察を踏まえて、次の2点から指摘される。
@一本杉通りの歴史的町並みに寄与し、広く親しまれてきた建造物
風情ある商家の趣を残した紅殻色の七尾町家、今では珍しくなったことからも広く親しまれており、今後の一本杉通りの歴史的町並みを形成していく上で極めて重要である。
A明治38年の七尾大火を逃れた稀少な七尾町家
現存する伝統的な町家のなかで明治38年の七尾大火を逃れたものは実に数少ないため、それ以前の町家形式や住まい方、商業生活文化を考える上で貴重な歴史的建造物である。
「北島屋茶店」復元模型 制作:うらべ家具店 浦辺健一 50分の1(店内に展示) 復元模型正面 復元模型全景 復元模型2階 復元模型1階
敷地と推薦建造物の関係<北島屋茶店> <通常望見できる外観について>
北島屋茶店は、道路に接する町家であり、
隣接する周囲は住宅で囲まれている。
そのために、通常望見できる外観は、正面のみである。