題詠マラソン2004 投稿作品100首

001:空 2004年10月09日 (土) 12時26分

空と虚の隙間を満たすものとして酒の半ばの塩焼き岩魚

002:安心 2004年10月09日 (土) 12時28分

午後五時のコンビニエンスストアーの棚の酎ハイにこそ安心(あんじん)を

003:運 2004年10月09日 (土) 12時30分

賭け事のやうに呑み継ぎ壊れちまつた肝と腎とが運上の品

004:ぬくもり 2004年10月09日 (土) 12時30分

ぬくもりを欲るだけのこと人の手が人の手を欲るそれだけのこと

005:名前 2004年10月09日 (土) 12時31分

人名漢字のしばりには「糞」はなく常用漢字に「死」はある名前

006:土 2004年10月09日 (土) 12時32分

土橋はつちはしだけどどばしとも呼ばれ二重に録す電話帳

007:数学 2004年10月09日 (土) 12時36分

数学の仏頂面にあることのアコースティックギターのやうに

008:姫 2004年10月09日 (土) 12時39分

秋深く刈りたる萩の切り株のそに生れし芽が薄命の姫

009:圏外 2004年10月09日 (土) 12時40分

圏外の歌とは思へど星空ゆなみだに「君(くん)」をつける歌降る

010:チーズ2004年10月09日 (土) 12時40分

愛の薄れに比例して子は太りゆく三角コーナーのチーズのかけら

011:犬 2004年10月09日 (土) 12時41分

犬に引つ張られゐるは妻だぞ小川まであと二メートル飛べるかな飛べ

012:裸足 2004年10月09日 (土) 12時42分

風呂上りの裸足を厭ふ踝が十代の肌の色から遠い

013:彩 2004年10月09日 (土) 12時43分

彩といふAV女優虹色のストールに耳を隠し歩くよ

014:オルゴール 2004年10月09日 (土) 12時44分

オウンゴールの歎声籠る四畳半に鳴る横倒しのオルゴール

015:蜜柑 2004年10月09日 (土) 12時45分

緑なる蜜柑が好きと知つてから緑ばかりを選り呉るる妻

016:乱 2004年10月09日 (土) 12時46分

聞いてよ見てよと詰め寄つて食ひ物を売るスーパーマーケットの一角の乱

017:免許 2004年10月09日 (土) 12時48分

文学に免許皆伝その昔いや現今の秋霖の果て

018:ロビー 2004年10月09日 (土) 12時49分

ロビーにルビーの忘れ物とは絵空事ともならぬ愛

019:沸 2004年10月09日 (土) 12時50分

沸点のその手前にてなべ底にしがみつきゐる水泡剥れたり

020:遊 2004年10月09日 (土) 12時51分

砥石に水玉は成らずよと十分も試してゐる遊学生

021:胃 2004年10月09日 (土) 12時53分

もつと押せとの声ののち潰瘍の十二指腸現れし胃カメラ

022:上野 2004年10月09日 (土) 12時54分

万智さんとキリンシティに入りしは上野動物園の取材そこそこに

023:望 2004年10月09日 (土) 12時55分

望とは上の息子の保育園時代の同級生にして他人

024:ミニ 2004年10月09日 (土) 12時56分

稲刈の中学生の弁当のミニウインナーソーセージ欲し

025:怪談 2004年10月09日 (土) 12時57分

段階を踏むことも怪談の一手法とて月に海あり

026:芝 2004年10月09日 (土) 12時58分

離縁の回と子の数同じを笑ふ増上寺三丁目の芝田くん

027:天国 2004年10月09日 (土) 12時58分

似非編集者は天国のてんぷらが好きといふ人の半分はゐる

028:着 2004年10月09日 (土) 12時59分

着る物のことにて日本の着る物にかぎられし着物とは蟄居

029:太鼓 2004年10月09日 (土) 13時00分

太鼓橋渡りて太鼓楼に着きし太鼓腹なる鯛太閤

030:捨て台詞 2004年10月09日 (土) 13時00分

捨て台詞拾ひ集めて汚泥ともならぬ家庭を構築しをり

031:肌 2004年10月09日 (土) 13時31分

紙飛行機ほどの時間を汝が肌のその荒れへ我が吐息かけたり

032:薬 2004年10月09日 (土) 13時32分

菓子袋詰まれる棚を探りをれば目薬顎を滑り行きたり

033:半 2004年10月09日 (土) 13時33分

詩のこゑを待つ仏の半ばは乾び丑三つの詩のこゑを待つ

034:ゴンドラ 2004年10月09日 (土) 13時34分

生壁に拳突きたてゴンドラと南瓜の馬車を較べ続くも

035:二重 2004年10月09日 (土) 13時34分

すでに大人の歯のおおむねは揃ひしが奥二重その奥の出でこず

036:流 2004年10月09日 (土) 13時37分

瀧の時間を言ふうたびとに泉より流れ出でたる笹舟の転

037:愛嬌 2004年10月09日 (土) 13時38分

昼と夜の入り乱れたる自慰自愛嬌童の名にぬかづきつづけ

038:連 2004年10月09日 (土) 13時39分

阿波踊の連を組む遠つ国人の胸のはだけを魑魅(すだま)と思ふも

039:モザイク 2004年10月09日 (土) 13時55分

失せ物の花鋏出づ切らんと思ふモザイク病の胡瓜の葉など

040:ねずみ 2004年10月09日 (土) 13時59分

火山報道が伝へぬ道ありきねずみの逃げし道ありき溝

041:血(抜け追加投稿) 2004年10月09日 (土) 22時35分

噴火とは大地の血にて血の色の吾亦紅をも血塗り尽くせり

042:映画 2004年10月09日 (土) 13時59分

学生時代一度きり観し映画「生きる」前売券の半券の焦げ

043:濃 2004年10月09日 (土) 14時01分

何番目に広いかは忘れたけれど濃尾平野の只中に逝つた短歌の核

044:ダンス 2004年10月09日 (土) 14時06分

「ダンスが済んだ」と汝が言ひし後「ダンス」にては題詠を諦めて久し

045:家元 2004年10月09日 (土) 14時07分

化句(ばけく)の類(たぐひ)の句集一本家元を名乗る限りの引き出物

046:練 2004年10月09日 (土) 14時08分

戦争の教練として騎馬戦はあるとも見えず女隊強し

047:機械 2004年10月09日 (土) 14時09分

はみかへす癌に頭髪奪はれし男対峙せり機械十方

048:熱 2004年10月09日 (土) 14時11分

熱の身を横たへゐたる布団よりはもじく足の指覗きをり

049:潮騒 2004年10月09日 (土) 14時12分

椋鳥(むく)の引け鳥が残せる潮騒のやうなもの妻の寝息途切れつつ

050:おんな 2004年10月09日 (土) 14時13分

だからをんなはいやよにじふいつせいきもこをうむのはあたし

051:痛 2004年10月09日 (土) 14時14分

痛風のだんなの飲み残しだけど飲めと寄こしぬみどりの一升瓶

052:部屋 2004年10月09日 (土) 14時15分

部屋といふ部屋を紙にて埋めつくし四畳半の下宿が広かりしころ

053:墨 2004年10月09日 (土) 14時22分

磨墨(するすみ)に生唼(いけづき)をけしたててけり騎馬戦風林火山組はも

054:リスク 2004年10月09日 (土) 14時24分

クスリクスリともごもご言へり薬のリスク程度の駄洒落叱りつつ

055:日記 2004年10月09日 (土) 14時26分

脚のあるテレビを絵日記にみつけたからにはいばらうとおもふ

056:磨 2004年10月09日 (土) 14時28分

麿といふ超短編映画監督糞を撮りカメラのレンズを自ら研磨

057:表情 2004年10月09日 (土) 14時29分

海図を褒めよ表情を和らげよマゼラン死すともその後のするめ

058:八 2004年10月09日 (土) 14時30分

飲むなと言ひつつ注ぎくるる妻八朔の浅間噴火の午後八時

059:矛盾 2004年10月09日 (土) 14時31分

矛盾とは矛あらば盾盾あらば水を置きつつ呑むブランディ

060:とかげ 2004年10月09日 (土) 14時32分

とかげまでのほんの三十センチをいざ教室へ後退せんか

061:高台 2004年10月09日 (土) 17時43分

死に至る色恋ざたの只中に高台の望遠鏡勃起せり

062:胸元 2004年10月09日 (土) 17時44分

胴元の胸元の毛を眺めつつ丁にもあらず半にもあらず

063:雷 2004年10月09日 (土) 17時45分

大町山岳博物館は閉鎖され雷鳥の今日明日の混沌

064:イニシャル 2004年10月09日 (土) 17時46分

五月雨が四日もつづき心身に彫りし女のイニシャルいよよ

065:水色 2004年10月09日 (土) 17時47分

氷水色を付けるに練乳のその粘りほど父母の恋

066:鋼 2004年10月09日 (土) 17時48分

じぐざぐに歩めり友の妻までの鋼(はがね)延べたるごとき道行

067:ビデオ 2004年10月09日 (土) 17時49分

今日も妻のことばのままに働きてビデオ再生スイッチはどれ

068:傘 2004年10月09日 (土) 17時51分

傘を恐るる捨て犬なりしご主人の黄色い傘へ退り吠えるは

069:奴隷 2004年10月09日 (土) 17時51分

日本の長野の佐久の新子田 (あらこだ) の私(わたくし)なり地球船奴隷号

070:にせもの 2004年10月09日 (土) 17時52分

僕のにせものとして佇つ昨日まではああ悦楽の黄葉降る落葉松

071:追 2004年10月09日 (土) 17時54分

墨汁の栓は地平に水平に作られ桜花を追はんとす

072:海老 2004年10月09日 (土) 17時56分

片方の靴の在り処がわからない海老寝のままの妻の背を見き

073:廊 2004年10月09日 (土) 17時57分

廊下には新興宗教本を置き患者に歩き方教へをり

074:キリン 2004年10月09日 (土) 17時58分

背高泡立草とは違ふキリン草のキリンを漢字で書けない悔ひ

075:あさがお 2004年10月09日 (土) 17時59分

あさがほは十月中旬を咲きつづけ木つ端微塵の過去をわらふかな

076:降 2004年10月09日 (土) 18時00分

台風22号アジア名マーゴン最強の降りにてコロの小屋冠水

077:坩堝 2004年10月09日 (土) 18時01分

「戦死要員」と呼ばれし学徒なりき高圧線直下の坩堝に藷掘る

078:洋 2004年10月09日 (土) 18時02分

「酔うて東洋西洋と」とはわが句にて洋の東西問はず酔ひゐる

079:整形 2004年10月09日 (土) 18時03分

擦りむいて外科に通つてゐた日から程なく整形外科に通ふも

080:縫い目 2004年10月09日 (土) 18時04分

ミシンやはり故障してゐる雑巾の縫ひ目のやうな口元である

081:イラク 2004年10月09日 (土) 18時05分

縄文土器と平安土器の違ひなら解ると長野在住イラク人

082:軟 2004年10月09日 (土) 23時23分

去るに広すぎる日本地図の一点に軟弱なる田の土の染み

083:皮 2004年10月09日 (土) 23時24分

どんぐりの帽子があまた木に残り甘皮の有無有耶無耶なれど

084:抱き枕 2004年10月09日 (土) 23時25分

抱かれゐることを感じず抱き枕四の字固め卍返しを

085:再会 2004年10月09日 (土) 23時26分

巨大スーパーマーケット左右から攻めゆきて緑茶売り場にて再会

086:チョーク  2004年10月09日 (土) 23時27分

肌色といふ色の無くなりし世のチョークの色のみどり薄々

087:混沌 2004年10月09日 (土) 23時27分

月夜茸紅茸猿の腰掛と山姥の混沌の足跡

088:句 2004年10月09日 (土) 23時28分

昨夜(きそ)の雨溜めたる土の窪よりの嘆きを掬ふ器ぞ俳句

089:歩 2004年10月09日 (土) 23時29分

秋になつて受粉した妻のやうな南瓜の歩一歩の

090:木琴 2004年10月09日 (土) 23時29分

大きな木から採れたる木琴の音こそ木霊と知らず弾きをり

091:埋 2004年10月09日 (土) 23時30分

平凡のカルトといふにすぎざれど妻といふ名を捨てて埋没

092:家族 2004年10月09日 (土) 23時31分

積木崩しの先に家族はあるはずなし家捨て族捨て得し妻と子へ

093:列 2004年10月09日 (土) 23時32分

(か)れ果つるまでの憎悪と思ひつつしつかり列を乱してゐたり

094:遠 2004年10月09日 (土) 23時33分

一行の一齣の我が証たる言葉には句読点遠景だよね

095:油 2004年10月09日 (土) 23時33分

よく拭かず入れたるからによく油四散してゐる烏賊のてんぷら

096:類 2004年10月09日 (土) 23時34分

かまつかの類(たぐひ)ばかりの庭にしてたらちねの母ものを焼く母

097:曖昧 2004年10月09日 (土) 23時35分

いい加減どつちつかずの曖昧な生返事より妻は生まれる

098:溺 2004年10月09日 (土) 23時35分

溺るるか溺れるかを考へてゐるから藁は流されていく

099:絶唱 2004年10月09日 (土) 23時41分

ひたすら絶唱ひたすら歓喜ひたすらに晩年である今と思へば

100:ネット2004年10月09日 (土) 23時42分

五分おきにネットとメールクリックしインターネットとは孤りなり

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