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題詠マラソン2003出詠作品一覧by島田牙城

100:短歌

   降るならばどしやぶりが良し約束の死の極限を立ちませ短歌

099:かさかさ 

生受くる以前の夢にある妻かさかさに吊られ剣当てられ

098:傷 

太陽の寿命を知らず見舞ひたき人もおらずの傷をひきかく

097:支

雪が解け畑に土の戻りくる茄子胡瓜その支柱のいづこ

096:石鹸 

折るるほかなきまで減りし石pのやはり折れしを例ふれば母

095:満ちる

満ちるなきチルチルミチル止まり木の寺山修司そろそろ紅葉

094:時 

寝室は妻と我との居室にて息子の寝ねてゐる時悔し

093:恋 

目瞑りて雷を聞く雷の轟くなかに恋を落とせり

092:人形 

人形(ひとがた)を掘り出すことが生業の炎暑炎熱嚥下せる土

091:煙 

線香の煙棚引く六畳の空気乱せり四人目孕み

090:ぶつかる 

息子とはどこまでが我屋根の子の星掴む手にぶつかる我が手

089:開く 

天啓といひたる天を証しえぬ天に目開く歿後のありや

088:象 

象嵌の貝が耀くごとくには子は耀かずきんぴらごばう

087:朝 

毎朝よ洗濯前に居間へゆきあなたの靴下を探すこと

086:とらんぽりん 

とらんぽりんの下に落ちゐし爪楊枝ウィンナー分けくれし朋はも

085:銀杏 

銀杏か銀杏か知らず ここまでを書き終へてさてどれをどう読む

084:円

円形脱毛の幼稚園児の耳元で毛鉤の話はじめたる人

083:予言 

日本酒に浮ぶ光暈予言通り鼾かきはじめたる愚妻は

082:ほろぶ

たとへば包み紙の滅びを一日に何度執行せしやほろびむ

081:ノック

大阪府知事のノックのセクハラは許さず芸人ノックを許す

080:織る 

小女子の板を見てをり小女子を織り込む術のあるべし海に

079:眼薬 

眼薬の箱へ押し書き赤ペンのインキ絶えしを認め捨てたり

078:殺 

烏頭花むらさきのしたたりに殺人鬼わが脳内麻酔

077:落書き

木に掘りし落書きの名のいつしかに太りて脂を垂らしゐるらし

076:てかてか

すでに進歩を断念の酒呷りつつてかてかてかと歩む助教授

075:痒い

二十歳へのあと数ヶ月とりあへず蚊に食はれたる足裏痒し

074:キャラメル

キャラメルが欲しいのではなしキャラメルの箱の上なるキャラなるアトム

073:資 

資産あるとも思はれぬ父の死のひたにゆるりと歩み来ませり

072:席

席書きを乞はれて紙の無かりせば箸紙へ鉛筆で酔句を

071:待つ 

とんがれる唇に泡見え隠れ待ちをりその口よりの「ごめん」を

070:玄関 

玄関にドアなし窓は格子にて屋根あり天井なしポチの小舎

069:コイン 

数学の教諭がコイン数へゐるサインコサインコカイン如何に

068:似る

板チョコを歯にて折る音ぎつくり腰の大音響に似てゐたり

067:化粧 

テンガロンハットとふいに思ふでもなく化粧せる二十歳の男

066:僕 

僕と言ふ女の子にて槇の木の高きに登る吉野山中

065:光

動詞たる時「る」を送る慣はしの「光る」ぞ固有名詞の「光」

064:ド−ナツ

生れてすぐ死語となるものその中のドーナツ現象痔にはあらざり

063:海女 

向日葵に見られゐるらし向日葵の種の部分に目鼻書きし海女

062:渡世

国語辞典に和製英語の増殖し賽の河原を歩むも渡世

061:祈る

蛸草の抜けやすき根の円錐の先に残せる細根へ祈る

060:奪う 

奪はるるほどには才の無かりしに照星たらむ北辰たらむ

059:夢

むばたまの夢のかけらを取り出だしネパールオパールラサール石井

058:たぶん

たぶん小学校の友達である七輪に炙られてゐる夢

057:蛇

使ひ馴れたる蛇練塀の彫り深き落書き「love」に納むる技を

056:野

野上弥生子の藁屋に雪の降ることのそのひとひらを途上の花と

055:置く

万恨の根に置く命よぼよぼと山のなだりを登る狼

054:麦茶

あつあつの麦茶が好きな女の目地雷廃棄のための爆薬

053:サナトリウム

入竺の悟空が清らならんとすサナトリウムの空気の外の

052:冷蔵庫

そのかみ 氷塊を入れ蓋をせば肉の長持ちせる冷蔵庫

051:敵 

照子姫は己が病を恨むことなきに美賀子を敵とし自死す

050:南瓜 

南瓜より胡瓜が易し畑には棚ざらしなるトマト腐るも

049:嫌い

募る人嫌ひを嫌ひ氷湖への道の途中となりてをりしも

048:死

死に師なくコミック雑誌束ねられ捨て置かれたる稲荷裏山

047:沿う

にんまりと妻は存りけり穫りいれの秋茄子ひとつを頬に沿はせつつ

046:南 

黒南風のとぐろを南の山に見し隠れませうか隠れなさんな

045:がらんどう

    出金伝票日に日に入金伝票に減りの差をつけがらんどうの空

044:殺す

半殺しよりもう少し殺さんとたたきつづけておはぎ遅れたり

043:鍋

鍋底を磨きゐる間に帰り来し子が出でゆきてKし鍋底

 042:クセ

かたくなにクセを直さず勉強も食事も死の床にても頬杖

041:場

縄跳びをする場ではなき六畳の畳一枚擦り切るる訳

040:走る

生まれたての宇宙の光捉へたるまでも走りて神を畏れず

039:贅肉

犬小屋の真上の月の兎にて餠を搗けども減らぬ贅肉

038:明日

人妻の立脚点と言ふほどの明日の天気予報が外れ

037:とんかつ

とんかつは黒豚がよし黒豚は鹿児島がよしそれも千葉産

036:遺伝 

面白くなき歌ばかり読み継ぎて俳の遺伝子なるを諾ふ

035:駅 

駅伝の日本生まれといふことのそもそもが和をもつて尊し

034:誘惑

雑巾に髪ひともとの絡みつき洗へど取れず誘惑の果

033:中ぐらい

東京にすでにあらざるものなれど殿中ぐらい血染めを好む

032:星

ティッシュペーパーにて星を包みいつさりとて銀行へ急がねば

031:猫

招き猫千体に客一人なる新宿東南口サムライ夜更け

030:表

表装は自腹でせよと言ひたつる公民館長稲束へ手を

029:森 

向日町立向陽小学校四年一組の森真人今存らば同い歳

028:三回 

三回転半の半さへ判らずにフィギアスケートとはみどりなり

027:忘れる

煙草一服酒一杯に壊れたる脳細胞の忘れたるもの

026:妻 

解きえざるものを数へて妻の続きのいつまでも出でこず合点

025:匿う

月が地球を匿ふに似て匿はれゐることをこそ妻への愛ぞ

024:きらきら

梅の木の蕾が梅であることの当たり前こそきらきらと春

023:詩 

コップありその中の酒ものを言ひ詩なぞ鼠に任せて眠れ

022:素 

素つ気なき女は後を追ふによし娘の父の成れの果てにて

021:窓 

さいはての家にも窓のあることを知らずに死にし父母をかし

020:害 

街灯に害虫が群れ街灯は星の害なることを恐れず

019:蒟蒻 

蒟蒻をまづ板に切り真ん中に切れ目を入れて返さむ 出来ず

018:泣く

泣くまねが上手と言はれ泣き続け涙の海に底浅きこと

017:雲 

雲と呼ばれ宿場のダニと死にゆきし弥助が墓の裏の恋の句

016:紅

紅花を恋へると芭蕉恋へるとに差なき楸邨紅花恋へり

015:葉

老いらくの男色バーに入りびたり白菜の葉の数多噛み傷

014:段ボ−ル

だだだだんぢぢぢんづづんででででんどどんと段ボールで返本が

013:愛 

灰皿が土星に見ゆる福寿草ほどの愛など育てしがため

012:突破

突破せよ突破あるのみ弱精子突破ののちのそののち掻破

011:イオン

蛇笏忌の山川風の鋭くあれば金属イオンにてお買い物

010:浮く

あなにえしえ男よと始まりし大和に在らば浮いた話も

009:休み

休めとは右足を四十五度前に半歩出すこと休みにあらず

008:足りる

方言か文語か解からざる語あり足りるを足ると言ひなすたとへ

007:ふと 

教鞭のふとしたことに鞭を忘れ教ばかりとよすみれ花咲く

006:脱ぐ

名前消し忘れ脱ぎ捨てたる白衣浮かび歩めり小児病棟

005:音 

立冬を駆け抜ける音そびらにし雪の中にて炭つぐ茂吉

004:木曜 

木曜は水曜のあと金曜のまへにて星の並びとたがふ

003:さよなら

人間にさよならを言ひさよならの木霊の中へ人間を置く

002:輪 

人の輪へ柊を刺し鰯刺し止めとし刺さむ柳人鶴彬

001:月

Mを纏ひ落つる肉塊昼月を染めることなきシャトルの果ての

 

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