此処には炎が十二国記で泣いた・笑った・感動した・納得した・共感した・惚れた(笑)
セリフやモノローグ、場面が置いてあります。



キャラセリフ状況・コメント
陽子

月の影
 影の海
 ───止めを刺してどうする。見捨てただけでもこんなに心に重いのに、殺してそれでどうやって生きていくのだ。命がありさえすればいいのか。どんな醜い生き物に成り下がっても、ただ生きていられればいいのか。

「……殺さなくてよかった……」

 早まらずに、魔がささずに、それを実行に移さないでよかった。


 なぜ人を信じることができなかったのだろう。
 鵜のみにしろと言っているわけではない。それでもあのネズミを信じることが、陽子にはできていいはずだった。



「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしのなにが傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」

 追いつめられて誰も親切にしてくれないから、だから人を拒絶していいのか。善意を示してくれた相手を見捨てることの理由になるのか。絶対の善意でなければ、信じることができないのか。人からこれ以上ないほど優しくされるのでなければ、人に優しくすることができないのか。

 陽子自身が人を信じることと、人が陽子を裏切ることはなんの関係もないはずだ。陽子自身が優しいことと他者が陽子に優しいことは、なんの関係もないはずなのに。
 ひとりでひとりで、この広い世界にたったひとりで、助けてくれる人も慰めてくれる人も、誰ひとりとしていなくても。それでも陽子が他者を信じず卑怯にふる舞い、見捨てて逃げ、ましてや他者を害することの理由になどなるはずがないのに。


「……強くなりたい……」

 世界も他人も関係がない。胸を張って生きることができるように、強くなりたい。


 ここで死んだらおろかで卑怯なままだ。死ぬことを受け入れることは、そんな自分を許容することだ。生きる価値もない命だと烙印を押すことはたやすいが、そんな逃避は許さない。


「ぜったいに、負けない……」
 恩人である楽俊を見捨てて逃げた後の陽子の悔恨シーン。
 ここら辺から陽子が毅く逞しくなってゆきます。これ以前の陽子ははっきり言って好きじゃありません。しかしそれまでの陽子が居たからこそ王に相応しい陽子も居る訳で、追い詰められた陽子が取った様々な行動をアニメでは陽子と一緒に居た友達(?)がしてますが、それじゃあ意味が無いと思うのです。
楽俊
陽子

月の影
 影の海
「陽子は遠い人だったんだな……」

「わたしは」

「ほんとうなら、おいらなんかが口をきける方じゃねえ。陽子、なんて呼び捨てにも、もうできねえなぁ

そうとなれば、一刻も早く延王にお会いするのがいい。関弓へ向かうよりも近くの役所に届け出たほうが早い。事は国の大事だからな

遠路のことでお疲れとは存じますが、ここからならばまっすぐ関弓に向かわれるよりも官に保護をお求めになるほうが早い。延王のご裁可があるまで宿にご逗留願わねばなりませんが、ご寛恕ください」


「わたしは、わたしだ」

「そういうわけには」

「わたしはわたしでしかない。一度だってわたし自身でなかったことなんかなかった。王であるとか海客であるとか、そんなことはわたし自身には関係ない。わたしが、楽俊とここまで歩いてきたんだ

どこがちがう。なにが変わったの。わたしは楽俊を友達なのだと思ってた。友達に豹変されるような地位が王座なんだったら、そんなもの、わたしはいらない

そういうのは差別っていう。楽俊はわたしを海客だからといって差別しなかった。なのに王だと差別するのか」


「……陽子」

「わたしが遠くなったんじゃない。楽俊の気持ちが、遠ざかったんだ。わたしと楽俊のあいだにはたかだか二歩の距離しかないじゃないか

楽俊、ちがう?」


「……おいらには三歩だ」
 陽子が慶国景女王であるらしいと判った後の会話。
「おいらには三歩だ」と返した楽俊が素敵だと思います。直ぐにごめんとは言えなかったんでしょうが、重い話の後なので、思わずくすりとさせられます。楽俊が陽子の気持ちを判ってくれたのも凄く嬉しい。
 良いなあ、楽俊。頭も良くてジョークも言えて、人間バージョンになれば格好も良くて。鼠バージョンは毛皮が気持ち良いらしいし。完璧じゃないですか(笑)
延麒・六太
延王・尚隆

月の影
 影の海
「……珍しいな、客か」

「俺の客ではない。おまえの客だ」

「オレの?知らねえ顔だな

そんで?あんた、何者だ」


「その品のない言葉づかいをあらためよ」

「よけいなお世話って言葉を知ってるか?」

「おまえが後悔するのだぞ」

「へぇ。あんたもついに嫁さんをもらう気になったか」

「冗談ではない」

「……んじゃ、あんたのかーちゃんか?」

「おまえは俺の妻(さい)か母でなければ礼儀を思い出せんのか

礼儀を知らぬ奴で申しわけない。これが延麒だ。六太、こちらは景女王でいらっしゃる」


「げ」
 ホンットに人が悪いですね、尚隆(笑)。六太と陽子が初めて会った時の会話なのですが、先に教えてあげれば良いのに、それをしない所が尚隆の良い所(?)なんでしょうねえ。まあ、この主従はお互い似たり寄ったりですから、六太も自業自得なんでしょう。
延王・尚隆

月の影
 影の海
「おまえはおまえ自身の王であり、己自身であることの責任を知っている。それがわからぬ者に王者の責任を説いたところで虚しいだけだし、自らを統治できない者に国土を統治できようはずもない」 決める時は決めます、尚隆。伊達に五百年王様やってませんね。当たり前の事を言っているんですが、実際はそんな当たり前の事が出来てない人の方が多い。嘆かわしいですね。まあ、かく言う炎もそうなんですが(爆)
延麒・六太

月の影
 影の海
「バカをやって、それが自分の損になるだけだとわかってても、人はあえて罪に踏みこむことがある。人はおろかだ。苦しければなおおろかになるってことだな」 六太もたまには良い事言うなあなどと思ってみたり(失礼)
 さしたる覚悟もなく道を踏み外す事はとても愚かで、けれどそんな人が殆どだと思いますが、確信を持って道を踏み外す事はもっと愚かだと思います。
陽子

月の影
 影の海
「正直に言うと、あちらがそんなにいいところだったとは思えない。こちらも前ほどいやじゃない

でも、こちらに来てからずっと、帰ることだけを考えてきた

両親がいるの。家があって友達がいるの。ほんとうに絶対いい両親でいい友達だったか聞かれると困るけど、それはあの人たちだけの責任じゃない。わたしは貧しい人間で、だから貧しい人間関係しか作ってこられなかった。でもここで帰ったら、もっとちゃんとやれると思う。ぜんぶ一からやり直して、自分が生まれた世界に自分の居場所を作れると思う。おろかだった自分がほんとうに悔しいから、あそこでちゃんとやり直してみたい」


 手摺をにぎりしめた手に滴がこぼれた。


「たとえやり直すことなんかできなくても、あそこはもうわたしのいるべき場所じゃないのだとしても、それでもやっぱり懐かしい。わたし、別れの言葉も言ってこなかった。前もって心の準備をするひまがあってちゃんとお別れができていたら、こんなに苦しくなかったかもしれない。でも、なんの準備もなくて、なにもかも放り出したままで

それでなくても、今日までずっと帰りたいって、絶対に帰るんだって、それだけで頑張ってきたことをあきらめるのはすごくつらい……

ここで帰ったらきっと後悔すると思うけど、帰らなくてもきっと後悔すると思う。どっちにいても絶対に片方が懐かしい。どっちも取りたいけど片方しか選べない」
 陽子が王になるか、元の世界に帰るか迷っているシーン。
 尚隆はこちらに来る時にある意味心の準備もお別れも済まして来れたのでこんな迷いは無かったでしょうが、陽子は何も判らないままに連れて来られましたからね。しかも尚隆と違って陽子は王になりたかった訳じゃなかった。迷って当たり前だと思います。もしかしたら、彼女のこの気持ちをホントに判ってあげられる人ってこの世界に居ないんじゃないでしょうか。
延王・尚隆
陽子

月の影
 影の海
「迷うなよ。おまえが王だ。それを忘れるな。王など体のいい下男のようなものだが、それを民に気取られるな。自分がいちばん偉いのだという顔をすることだ」

「どうすれば、そういう気分になれるんだろう

自信があればできるだろうけど、自信の持ちようがない」


「そんなもの」

 延は笑う。

「麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだな」

 陽子は少し呆れた気分で延を見返す。

「それが名君になるコツ?」

「そうだろう、きっと。少なくとも俺はこれでやってきたからな。文句があれば延麒に言え。それでも不服なら自分でやってみろ、と」

「……なるほど。覚えておこう」
 最高だー!尚隆!!(笑)。まあ、尚隆は本気でこんな事思ってないでしょうが………あ、でも朱衡辺りに嫌味を言われたら言うかも知れない。そう言う人だ、尚隆は(笑)


月の影
 影の海
 戦うということは、人を殺すということだ。これまで人を斬ったことだけはなかったが、それは人の死を心に背負う勇気を持てなかったからだった。いっしょに行くと言ったときに覚悟は決めた。大義のために人の命を軽んじようというわけではない。斬った相手とその数は必ず忘れず覚えておく。それが陽子にできる最大限のことだと、そう納得していた。 尚隆も「所詮玉座は血で購うものだ」みたいな事を言っていましたが(尚隆だったよね?)、一国の主になると言う事は、そう言う事なんですよね。形は違えど、王は民を殺さなければならない事もある。だから陽子の覚悟は判るし立派だと思うんですが、斬った相手とその数を覚えておくのは絶対無理でしょう(「風の万里黎明の空」でも結構殺す事になるし)
延麒・六太
延王・尚隆

東の海神
 西の滄海
「えーと……」

「主を裏切るからだ」

 ぼそりと言われて六太は自王を見る。

「そもそもお前が遊び歩いているからだろーがっ。おれまで小言を言われてんだぞ、冗談じゃねえや」

「そういうお前もサボっているんだろうが?」

「てめーほどじゃねえよっ!」

「五十歩百歩という言葉を知っているか?」

「似たようでも五十歩の差は確実にあるって意味だろ?」
 この主従の遣り取りは面白くて何度見ても笑えます。「五十歩百歩」の意味が………(笑)。素敵だ、六太!



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